2025年春より放送開始の作品、米澤穂信による『小市民シリーズ』を原作とし、監督:神戸 守によるアニメ化作品『小市民シリーズ』 19話『小鳩くんと小佐内さん』の原作未読での感想文となります。アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方は注意してください。
19話『小鳩くんと小佐内さん』
すれ違う二人
今回の話は、小鳩君と小佐内さんの二人の出会いと、事故後の入院生活で時間がかみ合わない二人のすれ違いが描かれるお話となりました。
冒頭からクリスマスの夜、彼氏彼女…のような関係になって二人で最初に迎えたクリスマス、ということで小佐内さんは、プレゼントまで用意。しかし、小佐内さんは鳩君は病院に来ている間も眠ってしまっており、お見舞いにこそ来てくれたものの、残されていたのはボンボンショコラと狼のぬいぐるみ。一緒に添えられた泣いている子ヤギと、それを食べてしまおうとする狼の図に、子ヤギを食べた悪い狼ですとのメッセージが添えられており、ある意味ぬいぐるみを自分と重ねて側に置いておいてほしいといった気持ちが込められていたのかもしれません。
そして、そこに添えられていたボンボンショコラの方は、一日一個ずつ食べてね、とのことでおそらく手書きの味の解説までついており、小佐内さんも力を入れたプレゼントなのがよくわかる。小鳩君の方も、つい二個目に手を出しかけていたのを見るに相当気に入っていたことがよくわかります。
ただ、入院生活で睡眠時間が長めになった小鳩君、どうにもそれ以降も小佐内のお見舞いとはすれ違い続けてしまっている様子。ラストの「どうしてわたしたち、会えないのかな。」というメッセージは、今の小佐内さんの胸の内を抑えきれずにといった感じが出ていました。
今回の事件の謎
小鳩君を牽いた車の事件についても小佐内さんは調査を続けているようで、今回改めてその情報が示される。ひとまず手紙に書かれていたのは以下の三つ。
- 黄色
- 小さな車(軽?)
- ナンバー不明
そして、3年前とは少し違うとのこと。前回確かに意味深に車のナンバーまで写っていましたが、流石にナンバーのはあくまではできていない様子。前回の事件とは少し異なる、とのこと。
ただ、3年前の事件はブレーキ痕が残っていたのに対して、今回はそこに言及されていないのを見るに、小鳩君、もしくは小佐内さんを狙ってきたという可能性があるように思える。さらにわざわざ昔の事件と似たシチュエーションにしていることから考えると、日坂君の事件に絡んだものという事になるのかもしれません。
中学3年生時点の事件
今回主に語られたのは、二人の出会いとなった日坂君が車に牽かれた事件。事故現場、自分止めがあったはずなのに、そこからさらに加速したという車の運転手を探す小佐内さんと、事件解決を目指す小鳩君との出会い。
小佐内さんの調査では、事件直後に堤防道路を歩いて移動、その道は一本道、さらに途中にはコンビニがあり、そこには監視カメラ。戻ってくれば、事件現場に向かった警察と鉢合わせなんてこともある道で、Uターンした可能性はなし。そうなると、道沿いの監視カメラに車が映っているはず、とのことでコンビニの監視カメラの調査。
相変わらずの人脈の強さは当時からあるようで、コンビニの娘さんを半ば脅す形で頼み込み、2時間分のデータを獲得。しかし、それでもそこに犯人の車らしきものは映っておらず。
結果二人で検証を行いましたが、河川敷は増水中、川に降りる道は、増水中は閉鎖されており、下に逃げて時間をつぶすという事はできず。ただ、このパート事件とは関係ありませんが、小佐内さんが自身が小さいから信用されないというくだりの話をしており、舐められがちな私に真っ当に向き合ってくれる小鳩君を評価していることが伝えられる。中学時代の二人の互恵関係については、あくまでこの事件のためのものでしたが、それ以降も二人で一緒に行動しているあたりも、こういう小鳩君の態度を気に入っていたことが伺えます。
怪しい証言
日坂君たち事件の関係者との会話を小佐内さん伝える会話の中で、小佐内さんは二人が意図的に話をそらしていることを指摘する。このあたり、小鳩君は気づかず、小佐内さんが気付くというのは、二人の性格の差がよく出ているようで面白かったです。
そして、事件の瞬間、日坂君の横を誰かが歩いていたという事実が明らかになる。それが誰なのかはわかりませんが、わざわざ自分が危険な道路側を歩き、謎の人物が自転車を引いて歩いていたとすると、日坂君が気を使っているようにも見え、彼女がそこにいたといった感じなのか。後ろを歩いていた後輩も、それに気づいていただろうにあえて話をそらしているのを見るに、隠さなければいけない人物がそこにいたという事のように思える。前回道沿いに落ちていた、単語帳も小佐内さんではなく、その子が持っていたものという可能性もありそうです。
しかし、なぜもう一人そこにいたことを隠そうとするのかはまだまだ謎。そのあたりを考えてみると、今回の小鳩君が小佐内さんを庇ったように、日坂君も横にいた人物を庇い怪我をしてしまった。そのせいでバトミントンの有望な選手が試合に出れなくなったとなると、庇われた人物に非難が集まる可能性も出てきてしまうので逃がしたなんてことはありそうに思える。
また証言の怪しさという意味では、前回の車の色が水色っぽかったという表現は大分怪しく、夕日の元で色を見違えている可能背はありそう。もしかすると、監視カメラの映像で車を見つけられなかったことにもそれが関係しているのかも。また、この事件犯人が捕まってしまうと、横にもう一人誰かがいたことが犯人の口から語られてしまうが故に、二人はあえてぼかした情報を伝えているなんてこともあるのかもしれません。
この中学時代の事件、最後は高校時代の小市民を目指そうとする小鳩君に繋がっているだろうことを考えると、どうにもよくない結末を辿りそうに思える。今回小鳩君は、現場にいたもう一人を探すために動き始めましたが、どうにもそれは、証言者二人からは望まれていない事のように思える。このあたりの小鳩君の行動が、彼のトラウマを生む結果に繋がってしまい、さらにはは現代の小鳩君のひき逃げにも繋がってくるのかもしれません。
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