アポカリプスホテル 9話『お客様の人生に、今日という栞を』感想

2025年4月9日より放送開始、監督：春藤佳奈　キャラクター原案：竹本泉 シリーズ構成・脚本：村越繁によるテレビアニメ『アポカリプスホテル』の感想記事です。ネタバレを含みますので注意してください。

9話『お客様の人生に、今日という栞を』感想

9話『お客様の人生に、今日という栞を』感想

ポン子とポンスティンの結婚式

前回さらっと登場してポン子といい感じになっていたポンスティン。何やらタヌキ星人の医者とのことで、ヤチヨさんがいない間に、ポン子とよい関係になっていたようです。

そんなポン子とポンスティン、話は結婚まで進んでおりその報告をヤチヨさんに行う。しかし、ヤチヨさんからの返答はまさかの腹パン。あまりの勢いに何事かと思いましたが、ポンスティンとポン子が結婚することでポン子が銀河楼から去ってしまうのでは？という懸念の元繰り出されたものだった様子。ただ、殴ってからその理由に気付いていたとのことで、ある意味彼女の心が先に反応してしまったようです。

前回の反抗期もそうですが、段々とヤチヨさんが感情を表に出すようになっているような気がする。今回のパンチも、ホテルの為にポン子が必要というホテルに対する意識故という面はありましたが、同時に自分からポン子を取られてしまうという自分主体な感情が挟まっていたというのがなかなか意味深。ここからラストにかけて、ヤチヨさんの心が話の主軸となっていくのかもと思わせる展開でした。

そんな結婚の報告は、流れるように親への報告へと移る。こういう場面だと父親が娘はお前には渡さない！というのが定番な気がしますが、むしろ今回はお母さんの方が子離れできていない様子。お父さんはむしろ暴走するお母さんを止めつつポンスティンにも気楽に話しかけている。

であるにもかかわらずなぜか、ヤチヨさんの拳がお父さんへと炸裂。男のタヌキ星人は殴れるという認識になっているのか、周囲の反応を見るにお父さんもごねていると思われたのか、もはや殴られ芸のようになっていますが、思わず笑ってしまいました。

おばあちゃんとの別れ

そんなこんなでポンスティンとポン子との結婚式に向けたお話が始まったのですが、今回のお話はそれだけでは終わらない。もう一つの軸として、おばあちゃんとのお別れのお話が展開される。

前回の話で体が弱っていることが伝えられていたおばあちゃんですが、今回その死までが描かれることになる。最後におばあちゃんは、銀河楼に改めて姿を見せましたが、それはホテルの面々に久しぶりに会い、ポン子の仕事ぶりをその眼で見て、ポン子たちに向けたお願いを伝えるため。

軽いノリで流されつつも、実のところなかなか深刻な話題であったタヌキ星人の母星の話。星を知らないで育ってきたポン子たちが、銀河楼があったことで再び当たり前を取り戻すことができたという流れは、これまでのおばあちゃんの様子からはわからないものであり、まさに彼女の最後の活躍であるが故に語られたものといった感じで良いシーンでした。

また、このシーンを見ていて思ったのですが、銀河楼の内部が描かれるシーンで背景にやがやと声が聞こえるように変わったというのが銀河楼の変化を大きく。前回の時点でもお客さんがかなり増えていましたが、もはや繁盛していると言ってもいいぐらいにお客さんが増えているというのはなかなか感慨深いものです。

葬式＋結婚式

おばあちゃんの死を迎えたポン子たちは結婚式を取りやめ、先に葬式を行おうとする。しかし、それを止めたのがヤチヨさん。おばあちゃんの願いをくみ取り、結婚式と葬式を同時にやろうと提案する。

正直この話は私の感覚で言うならこれでよかったのかな？と思ってしまうもの。式の内容も、おばあちゃんの亡骸を掲げての登場だったり、体を使った切断マジックショーはどうなの？という気持ちも頭に浮かんできてしまう。しかし、そもそもこの葬式と結婚式の同時開催はおばあちゃんが望んだもの。そして、あのおばあちゃんであれば、きっとこの会場が盛り上がることこそが一番の喜び。

ヤチヨさんが彼女の遺志を汲んだうえで行ったパフォーマンスであるするなら、部外者である視聴者どう思うかというのは関係ない事。そうやって考えると、ヤチヨさんの盛り上げは、本当にたぬき星人達のために行われたものなのだなと思わせる者でした。

ある意味、既にいなくなった人類に合わせたものではなく、新たな宇宙人がお客様であるからこそのまた変化した文化が生まれたのが今回のお話だったようにも思えました。今回は、ポン子とポンスティン、そしておばあちゃんのためのものでしたが、あれだけ多数の異星人が参加したうえであの盛り上がりを見せていると、地球では葬式と結婚式を同時に行い盛大に盛り上がるなんて話が宇宙中に飛び散り、もはや正式な文化となってしまうなんてこともありそうです。

結果的に、ポン子もポンスティンも、あの式に参加した誰もが忘れらない日となるだろうあの結婚式兼葬式。まさに今回のサブタイトル『お客様の人生に、今日という栞を』にぴったりなお話となっていました。