2025年春より放送開始、戯作・監督・脚本 渡辺 信一郎によるLAZARUS(ラザロ)10話『I CAN’T TELL YOU WHY』の感想記事となります。アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方は注意してください。
10話『I CAN’T TELL YOU WHY』
世界が終わる故
前回、なかなかぶっ飛んだ暗殺者双龍が登場したことで本当にまとまるのか?と少し不安になったラザロですが、今回は思った以上に話が広がり一気にスキナー博士の居場所に近づく展開となりました。
クリスが以前スキナーの家で見つけていた錠剤は、血栓を消すための薬とのことで、スキナー博士が人工心臓を使っている可能性が浮上する。しかし、かつての同僚であるハーシュも、人工心臓の件は知っておらず、どうやらスキナーが姿を消して以降の出来事とのことで、現在地につながる重要な情報の一つであることがわかる。
しかし、そんな手術をした形跡はどこの病院にも残っていない、それゆえに上位階級専用の医療団体があるとの推理の元調査を進める。手掛かりなしかと思われた中、リーランドがアスター家なる由緒正しき家柄の子孫であることがわかり、ダグ・アクセルを伴って実家へと向かい調査へと当たる。
リーランドの姉との再会を経て、週末一緒に過ごすという条件で医療団体の情報を得る。スキナー博士の人工心臓の情報と、人工心臓から発信されている情報が手に入り、現在そのスキナーの人工心臓の情報をモニターしているのが以前登場したポップコーンウィザードであることまでわかる。つまるところ、ポップコーンウィザードの捕獲に成功すれば、スキナーの居場所が判明するという段階まで話が進みました。
今回の話では、ハプナの副作用がいよいよ世間にも出始め、体温の上昇といった症状が現れ始めたことがわかる。ある意味、世界の終わりが現実的に見えてきたが故に、少しずつ人々が変わっていった様子が描かれたのが心に残りました。
リーランドの姉は、それまで頑なな態度をリーランドに取ってしまっていましたが、世界が終わる故に、少しだけ素直になり、一緒に過ごしたいと言葉をかけられる。スキナー博士の人工心臓の情報も、本来であれば守秘義務。一般には知られていない会員制の医療機関が顧客の情報を漏らすというのはとんでもない自体。しかし、そんなイレギュラーな情報漏洩が行われたのも、世界が終わる故。そして、何やらきな臭い米国陸軍の内部の情報も、世界が終わるのならとリークされ、スキナー博士の謎が一つ浮かび上がる。
スキナーが世界を終わらせようとしたからこそ、考えが変わった人たちの登場もあり、このあたりがスキナーが望んでいた事なのかもしれません。
プロトタイプハプナに絡んだスキナー博士の事件
今回リークされた映像では、スキナーがプロトタイプのハプナを持ち出そうとリークしようとしていたことが語られました。その当時の映像はスキポール空港の物とのことで、隣にいた少年のサインの求めのような行動にも答えているようで、その表情は非常に穏やか。以前の話に合ったスキナー博士そのものといった感じで、優しいスキナー博士が映った最後の映像といった感じです。
プロトタイプハプナを持ちだしたスキナーを追いかけた米国陸軍と、駅の警備が情報の齟齬によりかち合ってしまい銃撃戦が発生。プロトタイプの致死性の高いハプナが流出したことで大量の犠牲者が出てしまったようです。
この情報は、在欧米軍が確保していたとのことで、どうやら米軍がハプナの件に絡んでいることが示唆されました。スキナー博士も、プロトタイプのハプナをリークしようと持ち出していたと推測されており、米軍の元作っていた薬を認められず、世間に告発しようとしていたといった感じか。
しかし、スキナー博士の告発は実行に移される前に失敗に終わり陸軍情報局に確保されてしまい、3カ月後に再び研究所に現れた際には別人のようになっていたとのこと。一度情報局に掴まった後再び研究所に姿を見せたというのが気になる所で、その間に一体何があったのか。
おそらく陸軍的には、薬の開発者として替えのきかないスキナー博士を殺すわけにもいかず、協力するように非道な行いをしたなんてことはありそう。しかし、その後外に出て再び研究所に行くことができたのは、協力するふりをしたのか、はたまた協力者がいた故に逃げ出せたからなのか。仮に逃げ出せたとするなら、ポップコーンウィザードあたりとはこの頃に関係ができたなんてこともあるのかもしれません。
ハプナはなぜ作られたのか?
その事件の後、ハプナはアクセルのいた刑務所で実験が行われ、実験の生存者はアクセルのみ。更にその件を知っているのもその時の担当した刑務所の医者のみとのこと。その実験を通してスキナー博士はそこから正式なハプナを開発し痛みを感じさせない薬として世間に流通、そして3年後のラザロ本編での出来事に繋がったと考えられます。
そうだとするなら気になるのは、陸軍はなぜプロトタイプのハプナを陸軍開発していたのかという事。今のハプナの効果を求めて、自分たちは治療薬を完成させた状態で世界にばらまくことで世界の支配を狙ったなんてことも考えられそうですが、その割には米国自体もなかなか混乱しているように見える。
そして、拘束から解放されたスキナー博士がハプナを発表するあたりは妨害していないあたり、米軍の目的は無痛薬としてのハプナの完成だったという可能性はあるのかも。
しかし、プロトタイプのハプナは、ただの毒薬。アクセルが囚人として薬を飲んだ時点でもまだハプナは未完成で人を死に至らせる薬だったことから考えると、ハプナ完成のために大量の犠牲になる被験者が必要としており、それを嫌ったスキナー博士が情報のリークに行動を移していたなんてことはありそうです。
こういった方向で考えると、現在の陸軍情報局がアクセルを殺して情報を隠そうとしているのにもある程度話の筋が通るような気がします。
ただ、ハプナの件を告発したいだけならば、既に世間から身を隠したスキナー博士なら、簡単にできてしまうだろうとも考えられる。そうなると、その事件をきっかけにスキナー博士はもう一段何かを考え行動に移したのが、今の本編での事件とも考えられ、このあたりについては、ラストにかけて明かされていくのかもしれません。
アクセルとクリス
ここまでの話を見ていると、アクセルとクリスの二人は、プロトタイプのハプナの影響を受けてなお、死ななかった人物であると推測されます。
今回のラストでは、ポップコーンウィザードの確保に向かうイレイナにもハプナの副作用が出た様子が描かれ、世界でもハプナの影響が本格的に出始めいよいよ終盤となってきました。
そんな中、アクセルとクリスがハプナによる死から逃れていたのだとすると、そこにどんな意味があるのか、ここから気になる要素となっていきそうです。
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