永久のユウグレ
2025年秋より放送開始。監督・シリーズ構成:津田尚克、キャラクターデザイン:齊藤佳子によるP.A.WORKSオリジナルの本格ラブストーリーアニメ、永久のユウグレ の10話『彼と彼女の長い午後』の感想文となります。
アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方はご注意してください。
彼と彼女の長い午後
過去に何があったのか?
アキラがアンドロイドだと明かされ、いよいよ過去に何があったのかが明かされることになった今回のお話。トワサが行ったこと、その後のアキラがどうなったのかが判明し、トワサが最後にあそこまで自分を追い込んでしまうのもよくわかる予想以上の悲惨さがあると同時に、それでもアキラを失うことなく最後までトワサが片をつけたからこそ今の社会があるというのがよくわかるお話でした。
今回明らかになったのは、あの攻撃を受けても子供を作れなくなっただけで、トワサ・アキラ共に一命はとりとめる。二人はさらに研究を進め、LC計画を進めるために、ナノテクノロジーを越えたフェムテクノロジーにより、血と一体化した機械によりLC計画の達成まで話が進む。
ここでちょっと気になったのは、この新人類を作るフェムトブラッドなる血は、まさに特別な血と呼ぶのにふさわしいもので、アモルの両親が書いた絵本このことを描いていたようにも思える。そうなると、アモルの両親は事情を知っていたということなのか少し気になる所。
大きな課題を乗り越えて一気に進むLC計画ですが、その中で人の意識のハッキングが可能になってしまうという重大な結果があることが明らかになる。
この欠陥に気付いたのは、後の六賢人のうちの一人イングマール博士、トワサに伝えても彼女を苦しませるだけのとして、この不具合を隠すことを選択していましたが、その情報は外に漏れてしまい人のハッキングが行われてしまう。結局誰が漏らしたのか、という点は不明として話が進みましたが、研究者に関わっていた誰かというだけなのか、博士自身が漏らしていたなんて可能性もあるのかもしれません。
結果的に、いつ意識が操られてもおかしくない状況で社会が混乱。しかし、それでもまだここが悪い事の底ではなく、更にトワサを苦しめる容赦ない展開が待っていました。
AI戦争
これまで語られてきた本作のAI戦争、いまいちAIと戦争をしていたというのが何を指していたのかこれまでわかっておらず、てっきりそれを悪用した人同士の戦争だったのでないかと思っていたのですが、今回AI対人間での戦争だったことも明らかとなる。
その引き金を引いてしまったのは、またしてもトワサ。フェムトブラッドによる社会の混乱、自身を狙った攻撃に巻き込まれた父の死亡、その罪の意識に苛まれる中で自らの中にあるAIに自我を与え、解決を求める。そして、AIが導き出した答えは、人類の全滅という実にAI作品らしい答え。
ただでさえ、人の意識のハッキングが可能という状況で、AIが自由に動いた結果核戦争が勃発二日で世界はボロボロに。人類の殲滅のために動くAIにより、皆が追い詰められる中で作られたのがアンドロイド兵器のアウトサイドシリーズ。ハクボはその初期に作られたものとなっており、お姉ちゃんを名乗っていたのもそれが理由だった様子。他の姉妹たちも登場する中で、更にヨイヤミは対戦闘能力特化、ユウグレはイチキシマをベースにしたアンドロイドだったことが明らかになる。
その後無事、暴走するAIを宇宙に追い詰め、倒すことに成功し事件は解決。その後は、アンドロイド達の力もあり、そのまま今のOWELの管理する社会へと移り変わり、人工知能に関わる技術の発展を阻止するために計算機の破棄なども行われたとのこと。
しかし、暴走AIへの対処こそ済みましたが、フェムトブラッドの悪用による人の意識の支配に関する課題は解決されておらず、再び情報技術が発展すれば悪用するものが出てもおかしくない状況ことに変わりはない。だからこそ、OWELによる管理社会が、人類の発展させないよう管理していたようです。
なかなかのスピード展開で、ユウグレの全ての姉妹たちが登場し、暴走するAIとの決着までいった今回の話ですが、AI戦争に勝利できた理由にちょっと疑問が残る。国のトップを操ることまでできてしまうAIが、本気で人類を滅ぼそうとしていたとするのなら、最初に脅威になりうるトワサへの対処を行っていてもおかしくはないはず。それをあえてトワサを殺さずに自分を殺すことまでできるアウトサイドシリーズの開発まで許してしまったというのは、何やらちょっと違和感を覚える展開。
もしかすると、自らを打倒できるアウトサイドシリーズという強力な力の開発と、その力により強引にOWELにより管理された社会が形成されるところまで込みで、フェムトブラッドによる人類の混を納める計画としていたのではないかなどと思ってしまいました。ただ、それなら結局AIである自分で管理するという方が効率的な気もしますし、考えすぎかもしれません。
アキラはなぜアキラを動かさなかったのか?
この後のOWELにより管理された社会でのお話は、本編でこれまで語られた通り、トワサがユウグレを連れて失踪し今に続くといった感じ。ただ、アキラはその後二十年ほど最後までOWELの長官として働いており、晩年自身が動けなくなった後もトワサを探すために本編のアキラを製造したことがわかりました。
ただ、アキラを作りはしたものの、最後まで動かさず本編で目覚めるまで放置していたことも同時に明かされる。この点はあえてぼかされているようで、このあと語られることになりそうです。アンドロイドであるアキラを動かし探索させることは、間違えば技術の流出となることを警戒してとも考えられますが、道具のようにアンドロイドを働かせることに抵抗があったのかも。
今回、トワサが研究を進めていた大きな理由としてアキラと自分の子供をアンドロイドでもいいから作りたいというものがありましたが、数々の災害によりその計画は結局その後語られることはありませんでした。そう意味で見てみると、アウトサイドシリーズや、アキラの存在は二人の子供のようなものという考えていてもおかしくはなさそう。自分たちの子供のような存在に、自分の目的を達成させることだけを存在意義とするのはどうかと悩んだなんてことはあるのかもしれません。
なぜその記憶が事故の瞬間までなのか、体の傷まできっちり再現していたのか、と考えてみればまだまだわからない部分はだ残っており、アキラが残したアンドロイドのアキラに対する想いは、ここから終盤にかけて改めて明かされていきそうで楽しみです。
現代で行われた意識のハッキング疑惑
今回、フェムトブラッドによる人間の意識のハッキングが可能という事実が明らかになったことで、何やら妙な展開だったセンダイでの図書館の司書セシャトに絡むエピソードも伏線だった可能性が出てきました。
公式サイトのキャラクター紹介にてセシャトの瞳を見てみると、何やらそこには赤い三つの点が描かれていることがわかります。この三つの点今回意識のハッキングを受けた人に現れていたものとよく似ており、もしかすると、あの突然の暴走は彼女もまた意識をハッキングされていからなのかも。時折妙なOWEL管理官こそ登場する本作ですが、彼女の行動は突拍子もない展開はかなりこれまでの話から浮いているように思えた部分だったので、きちんと理由があるという方が納得できそうです。
そうなると問題なのは、誰が彼女の意識をハッキングしていたのか、そして、なぜそんなことをしたのかという点。一番ありそうなのは、直接彼女に接触していたヨクラータですが、仮にそうだとしても何故そんなことをしたのか?と言われるといまのところそれらしい答えは出てこない。彼女が隠していた禁書の廃棄が目的とも考えられますが、そうなら、彼女の意識を操れる時点で、あのタイミングでなくてもできてしまうはず。
そうなると、アキラたちが着たタイミングだから、意識を操れたとも考えられるのかも。ヨクラータがアキラ達やそのデバイスに興味を持っていたことから考えてみると、アキラ達が来たからハッキングができるようになったので試してみたということはあるのかもしれません。
ヨクラータについては、体のメンテナンスが必要という話がちらっとされていましたが、そもそも新人類であればメンテナンスは不要なことが今回語られており、そうなると彼は一体何者なのか?という点は疑問として残っている。メンテナンスが必要なアンドロイドというだけなのか、今回の過去パートでトワサが開発していたフェムトブラッド実用化以前のメンテナンスが必要な技術でAIとの一体化が絡んでいるのか。
ただ、ヨクラータはどことなくイングマール博士と雰囲気が似ているように思え、意識のハッキングの情報を漏らしたのは誰か?という点がぼかされたのもここに繋がってくるのかなという気もします。
どちらにしても終盤の展開にヨクラータが絡んでくるのは間違いなさそうで、今後どのように本編に絡んでくるのか気になるところです。
話は未来へ
色々な事実が明らかになりつつも、まだまだ分からない部分が見えてくる今回のお話でしたが、そのラストではアモルが大きく成長するまで時間が進むという展開を見せる。EDで成長していたアモルが描かれていたのは、こういう事だったからのようで、どことなく凪のあすからの展開を思い出すものでした。
想像以上に時間がかかったアキラの目覚めに加え、果たしてここからアキラ・ユウグレ・アモルの三人がどのような道を選ぶのか、いよいよ終盤に向けて何が起きるのか楽しみです。


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