エヴァンゲリオン放送30周年記念特別興行
惣流・アスカの幸せ
2026年3月8日に『エヴァンゲリオン放送30周年記念特別興行』がYoutubeで公開されました。本作は、惣流・式波、二人のアスカ・ラングレーの掛け合いが描かれ、画面サイズも16:9と、テレビシリーズ、旧劇場版からの流れを強く感じさせる作りの作品。
何となく当時の作品を思い起こさせる番外編的なノリで始まった本作ですが、旧劇場版で散々な終わり方を迎えた惣流を式波が茶化しつつも、では一体どこに彼女の本当の幸せがあったのか?という点を改めて突き詰めていく。本編でまだ元気だった頃を思い起こさせる自らの理想の未来を追い求める惣流の子供らしさ、と惣流とは全く違う道を歩み、既に大人になってしまった式波のどこか余裕さを感じさせる態度が、改めてこの二人が別人なのだなと感じさせる。
惣流の語りでは、旧劇場版ラストでの衝撃が忘れられない「気持ち悪い」という言葉の理由についても触れられ、あんな終わり方で自分が幸せになれるわけがないと様々なシチュエーションに自らの幸せを求めていくことになる。
カオル君が完全に負かされて退場したり、シンジが出てきてもいつものノリで追い返したりと、やりたい放題な二人。個人的には、アスカに崖から突き落とされて這い上がった来るシンジという存在が凄くツボにはまりました。
映像の方もなかなかにコミカルで、アスカ巨大化のくだりや、ナイフすっぽ抜けなんかは、何となく当時の悪ノリ的な懐かしさを描きつつも、話の核心にあるのはすごくまじめに惣流に向き合うもの。旧劇場版の終わりは納得のいくものではないとしつつも、では、新劇場版で式波が辿ったような道であれば幸せであったのか?と言われればそれも違う。最後に描かれたシンジと二人で幸せに過ごす一つの未来は、それ自体は彼女の確かな一つの理想ではあったのでしょうが、それすらも違うと捨て去る。
最終的に彼女が選び取ったのは、誰かに与えられた平和で幸せな世界ではなく、平和な世界を守り抜く、というヒーローとして戦い続けるかのような道。本編の彼女は、シンクロ率の低下に悩まされ段々と弱くなっていくことが彼女を追い詰めていたが故に荒れていました。しかし、そうやって荒れてしまったのもまた、彼女の奥底にある皆を守りたいという想いと、それを実現できない自らの不甲斐なさとの間の板挟みも大きな要因だったのかもしれません。
しかし、今回の話を見ていると、シンジに手を引かれ、幸せな未来を迎えるのも悪くないと思うアスカがいたのも事実。ただ、それでもなお、そんな誰かに与えられた幸せではなく、戦って守り抜く自分がいた世界を選ぶという彼女の答えは、新劇場版でエヴァのない世界で幸せになったシンジとは対照的ながらも、惣流・アスカ・ラングレーだからこその幸せへの道と思わせるもの。第27話「たった一つの冴えたやり方」をそこに重ねた意味も、何となくそこからの先を感じさせるものでよかったです。
結局のところ、ここまで歩み、戦い続けてきた自分を決して捨てることなく、そのうえで自らの幸せをつかみ取りに行こうとする、本編では失われていったひたすらに前向きでいようとしいる彼女らしいラストだったのが非常に良かったです。
とはいえ、彼女が選んだ道は、結局のところまだ自らの幸せな未来をつかみ取ったわけではなく、私の戦いはこれからだ!というラストであったことも事実。ある意味で誰よりも今の自分と向き合い続けている彼女の幸せが、いつかどこかで描かれてくれないかな、とも思ってしまう。このタイミングでこの映像が公開されたことを考えると、先日発表されたヨコオタロウによる完全新作に向けられた意味もあるのかな、などと少し期待してしまいますね。


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