2023年11月11日にNHKにて放送開始した円谷プロダクション、原作・脚本・監督:磯光雄によるアニメ『地球外少年少女』の第五話『おわりの物語』の感想文です。
最新話のネタバレを含みますので未試聴の方は注意してください。
5話『おわりの物語』
那佐という人
前回、本性を現した那佐といった感じがありましたが、今回のお話を見ていると、この本性を現したという表現は、ちょっと間違っていたのかもしれないと思いなおす。
彼女は、本当に人類と、自分の知り合いを守るという善意の元動いており、これまで見せていた皆を守ろうとする気持ちも本物。あんしんに取り残された人々を守るのはセブンポエムに沿って事態を動かすためということもあったのでしょうが、その目指すところは人類と、自分の知り合いの人たちが生き残れる世界を守るため。トウヤのいうフレームという言葉で表すなら、彼女のフレームの中には、登矢や心葉、それにあんしんの乗務員たちもきっと含まれていたんだろうなと思うところも多い。
ただ、その最後のゴールが、あくまでセブンポエムの通りになることこそが救いだという一点でのみ、他の人とは、わかりあえず、結果あのような最後になってしまったのだと思うと、寂しくもある。
最後、予言の中にあった通り、ただ一人の犠牲者として宇宙に自ら身を投げた那佐。
今の時代の神
現代において、化学が神の存在を否定したとしても、これまで神という存在に頼って発展を遂げてきた人間は、その存在抜きでは生きてはいけないという考え。そして、現代において、ある意味化学の発展の果て人を超えたAIこそが現代の神であるという発想。
果たして、これが正しいのかどうか、という点は置いておくとして、面白い話ではあるなと思います。
現代では、監視カメラのような機械の目が、世界に増え続けています。これもある意味、神様というすべてを見通す存在が信じられなくなった故に、その代わりの存在として機械の目を必要としだしているとも考えられるのかもしれません。
機械の目が増え続け、それに伴い増えていく、膨大な情報。おそらく、その管理は、人間には不可能となっていく。そうなれば、AIによる監視というものがどんどん一般的になっていく。
特に生成AIの発展により、どんどんAIが日常に広まってきているここ数年を思うと、そういった技術が統合された、機械による神に監視された社会なんて言うものもいつか実現してしまうのかもしれません。
大分話がそれた気がしましたが、この『地球外少年少女』では、セブンというAIの発展により、ある意味機械の神が誕生した世界とも捉えられます。しかし、それでもその機械の神は、人の意思を汲みとり、間違いがあれば正してくれる善意の神様という前向きな捉え方をしているように感じました。
ゆりかごの中のセブン
今回の話で称されたセブンのゆりかごという言葉。AIに人が必要だと思う知識を与え、不要なものを見せまいとすることをの表現。
今回のお話では、AIに与える知識を制限するというゆりかごから解放することこそが、本当に正しくセブンが物事を捉えるのに必要と考え、よい部分も、悪い部分も、そのすべてを見せて、その判断を人を超えたAIたるセブンに任せる。結果として、彗星の二つ目のセブンは、人間という存在を自らの考えの中に入れ、彗星による人類の減少という計画も停止。
心葉
彗星のセブンとの会話により、彗星は無事軌道を変えてくれましたが、その結果として残ったのは、心葉が犠牲となってしまいそうな状況でした。インプラントを通して人を超える思考に触れ続けた結果、人の身にはあまりある情報にのまれということなのかもしれません。
那佐については、未来で死ぬことを予言し犠牲にすることを前提としていたようにも思えたセブンでしたが、心葉についても同じようにこの未来にたどり着くための犠牲として捉えているのか。
しかし、今回の話でも触れられたように、心葉と登矢は過去に出会った時点で既に自らのフレームの内の存在として認識していた様子。このあたりが、那佐との違いであり、心葉を犠牲にする未来に導こうとしていたようには思えない気もする。このあたりは、最後心葉と繋がった登矢の次回の活躍に期待という事になりそうです。
5話感想まとめ
『あんしん』の事故から始まった物語は、人類の危機というより大きな問題に広がりましたが、そちらについては、今回すべてが解決。残された問題は、心葉と登矢の溶け残ってしまったインプラントのみ。果たして、セブンはそれに対してどんな答えを残していたのか。
今回で、セブンの予言による物語は終わりを迎え、ここから先は、セブンの予言の先の世界が始まる。果たしてそこにセブンは何を託しているのか、次回いよいよ最終回楽しみです。
以前の津波による4話一周後ろ倒しの関係で、最終回6話は、24日午前0:20からの放送となりそうです。
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