2024年秋に放送開始の作品、監督:上村 泰によるネガポジアングラー 9話『鍋パ』 の感想文となります。ネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方は注意してください。
9話『鍋パ』感想
釣りができない台風の一日
今回は釣りアニメでありながら、釣りができない、とある台風の日の一幕といった感じのお話。仕事終わりだったり、これから仕事といった感じの面々ですが、それでも台風の中コンビニに集まってしまうのは彼らの中の良さ故といった感じでほほえましい。
お店の商品を肴にして、いつの間にやら宴会の様相を呈し、その裏で常宏はひたすらに釣り糸を結ぶ挑戦を行う。釣りアニメとしては、なかなか異色の話運びとなった今回のお話でしたが、これが見ていて面白い。
こんな雨の中、だからこそ釣りに行くんだろうなと思っていた鮎川さんは、きっちり釣りに行こうとして止められていたり、珍しく羽目を外してお酒を飲んでしまっている躑躅森だったり、仕事モードの見た目になっていたアイスさんが、台風で仕事がどうしようもないとなるとぬるっといつもの緩い感じに変わっていたりと、これまでのお話で一人一人を丁寧に描いてきたからこそのお話といった感じで、彼らの交流を見ているだけで面白い。
そんな中、今週も相変わらずな優柔不断っぷりで、まわりをちょっとイラっとさせてそうな店長でした。先週の優君から今度はルアー釣りを教えてほしいとの連絡があったとのことで、嬉しそうにしているのは実によいシーン。奥さんとやり直すのは、無理というのは変わらないけれど、それでも息子とのつながりはきっちりと残っているようなのはよかったですね。
常宏の変化
そして、そんな中にやってくるのは、結構久しぶりながらも相変わらず物腰の柔らかい借金取りたち。今回は偶然、台風の中を逃げるようにコンビニに来てしまったことで常宏と遭遇。ビビる常宏に対して弁明する様がその根の性格の良さがわかって微笑ましい。そんな中、以前から体力がなさそうな姉さんが、死にそうということで、シャワーを貸すという展開に。コンビニですら開店休業状態の嵐の中、借金取りに休みはないという事なのかもしれませんが大変そうでした。
そして、そんな彼ら今回はなぜかアンコウ鍋の材料を手に持っていたとのことで、アンコウ鍋でのパーティーが始まる。今回釣りの描写は一切なしということで、魚を描くシーンもあまりないのかなと思っていたら、まさかのアンコウを捌くシーンにがっつり力を入れていたようで、皮をはぐあたりの生々しい感じが凄かったです。
今回のラスト、また金に困ったら貸してやると常広に話をかけたのは、コンビニの面々と語り合い、釣り糸の結合に必死に取り込む常宏を見て以前と変わったと感じ、少し常広のことを信頼したが故なのかなと思わせる展開でした。
借金というのは、貸す側も返せる相手かどうかをきっちり判断したうえでお金を貸すもの。少なくとも貸す相手へのある程度の信頼がなければ、お金を貸そうとはしないはず。常宏は、一度は返済をなかったことにしようとし逃げ回り、躑躅森に金を借りて借金を返すという、信用としては最低ラインの人間。そんな、彼への評価が今回の話を通して変わったが故に出てきたのが、最後の言葉だったように思えます。
そして、常宏の変化という点から今回の話を見ると、丸々一話かけて取り組んでいた釣り糸結びも、ある意味常宏が変わったことを表す象徴として描いていたようにも思える。以前の常宏であれば、簡単そうな道、楽な道を選ぼうとし、こんな地味で堅実な作業をコツコツと続けるという事はまず間違いなくやらなかった。それを、自分からこなし達成する喜びを知った常宏だからこそ、姉さんもまた金を貸してやるよと、彼を認める言葉をかけてくれたという事なのかもしれません。
もうすでに9話ということで、なんだかんだ終盤が近づく本作。そこで、みんな揃って一休みといった感じの話を差し込んできたというのは、ここから終盤に向けての大きな展開を前にした箸休めのようなエピソードだったというようにも思える。
色々と前向きに変わってきた常宏、しかし、彼が宣告された余命は着実に減っており、このあたりがそろそろ再び本格的に話に絡んでくるのかなという気がする。そのあたりに、躑躅森の弟の件なんかも絡まり、いよいよお話は終盤へと向かっていきそうです。
これまでのお話を経て、なんだかんだどのキャラクターも好きになってきた本作、どのような終わりを迎えるのか、楽しみですが、同時に寂しくもなってくるお話でした。
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