2024年秋に放送開始の作品、監督:上村 泰によるネガポジアングラー 11話『言わなきゃいけない』 の感想文となります。ネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方は注意してください。
11話『言わなきゃいけない』感想
釣りの意味
躑躅森と弟との出来事を描く冒頭から始まった今回の話は、消えてしまった躑躅森に対して向き合う常宏を描く。
なかなか衝撃的だった前回ラストの喧嘩。それでも、コンビニは人を必要とするし、生活は続いていくということで、常宏は躑躅森のいない中でも、バイトへと向かう。
前回の暗い展開から再びコンビニへと話が戻ると、やはりそのくらい雰囲気を吹き飛ばす明るさがそこにあるのが良い。二人きりの世界であれば深刻な問題ですが、周りから見る人からすれば、興味の対象だったり、そんなことよりも仕事が大事だったり、色々な見方が見えてきて、一気に本作らしい空気へと変わっていく。
その中でも、やはり常宏を引っ張り上げてくれたのは、鮎川さん。彼女は、本作ではいわゆる恋愛的な意味でのヒロインではありませんが、この状況でも常宏を釣りに誘っていくさまは、鮎川さんはやはり本作のメインのヒロインなんだなと感じさえる展開でした。行く場所がなくなったなら、躑躅森にはもう釣しかない。だから、釣りをしている場合ではなく、むしろ釣りをしなければならないと、今回の話の根幹の解決をうまく釣りに結び付ける流れも非常にきれいな展開。そして、そこから始まる常宏の釣りへの向き合い方は、これまでのお話の総決算ともいえる流れで非常に良かったです。
一つ一つ積み上げる
今回の常宏は、これまでの話の中で皆から教わってきた釣りに関する話を、一人で一つ一つ再び自分のものとして積み上げていく。釣りに関わる一つ一つを本当に丁寧に積み上げていき、シーバスへと挑んでいく。当然、真剣にやっただけではうまくいかないこともある。しかし、それでも自分にまだ足りないものがあるのだろうと再び前を向く。そこには、かつての聞きかじった話でFXに挑んで失敗し、何もかも諦めていた姿はもうそこにない。
そして、そんな常宏が一つ一つ向き合ってきた先に、釣のチャンスを自ら気付く。周囲の誰かの教えではなく、自分が積み上げた結果として手にしたチャンス。そして、その目的地で運命的に躑躅森と再会を果たすというのは、いよいよクライマックスに向けて話が進んできたなと盛り上がってくる展開でした。
今回のサブタイトルでもある『いわなきゃいけない』ことは、常宏の変化を表す言葉。悪いことをしたと思うなら謝ればいいという鮎川さんに対して、1話で助けられたお礼を言ってなかったことを思い出し、お礼を言わなきゃとなる常宏の前向きさも、まさにその変化を表しているようで非常に良かったです。
常宏の病気は?
そんな中、一つだけ懸念されるのは常宏の病気の件。過去の時点で2年と言われていた診断。今回、釣りを通じて前向きになった常宏は再び病院へ向かい検査を受ける覚悟を決める。
今回のこの診断を受けるシーンは、絶妙にその診断結果を濁して映しているのが、最終話どのような展開になるのかと気を引く流れでうまい。
緊張した表情、その後の家族への電話。どこか、ほっとしたような、それでいて素直に喜んでいるとも思えない表情。単にずっと気にしていた病気への懸念が消えた故に、力が抜けてしまったともとれますが、悪い結果を伝えられそれを受け入れたとも取れる。
ただ、本作のラストがここまで変わってきた常宏の死で終わってしまうなんていうのはあまりにも寂しいので、問題はなかったと次回躑躅森に伝えられるような展開になってくれないかと思ってしまいます。
おそらく、次回いよいよ最終回。躑躅森との本気の喧嘩その顛末はどうなるのか、常宏の病気はどうなるのか、シーバスとの決着はどうなるのか、いよいよ気になる展開となってきました。
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