2024年秋に放送開始の作品、監督:上村 泰によるネガポジアングラー 12話最終回『ネガポジアングラー』 の感想文となります。ネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方は注意してください。
12話 最終回『ネガポジアングラー』感想
二人での釣り
今釣りをするべきだろという鮎川さんの言葉の元、釣りに向き合った常宏。大物を狙う者同士、いつかは同じ場所にたどり着き、躑躅森との再会で始まった今回のお話。
これまでであればむしろ躑躅森の方から二人の関係を直そうと動いてくれたはずですが、今回は常宏から躑躅森に歩み寄ろうとする流れ。しかし、それを素直に受け入れることができない躑躅森を見ていると、まるでいつかの常宏のようで、これまでの二人の関係が逆向きになっているということがわかる。それはある意味、常宏と躑躅森が本当に友人になる上で必要なステップだったのかなと思わせるお話。
ともに釣りをするものの、気まずいままな二人。その間をつなぐ役割を釣りが持ったというのは、やはり本作が釣りアニメであるが故といった感じですが、釣りをして大物を釣り上げる中、自然と協力しいつの間にか二人の本音を話すことができているというのは非常に良い展開でした。
これまでずっと常宏を助けてきた躑躅森、そんな彼に対する常宏の感謝のありがとうと言う言葉は、ある意味弟の件がずっと心の奥に刺さっていた躑躅森を救う言葉にもなる。本作でずっと描いてきた二人の関係が、お互いを助けることになったというのが心に残るお話でした。
皆との別れ
病院に言った事、躑躅森の過去に何があったのか、釣りを通じて蟠りを捨て、全てを伝えあった二人は再尾家に戻る。そして、やってくるのは常宏との突然の別れ。
病気の件は、誤診などではなかったようで、地元に戻っての治療を始めることを決意する常宏。皆との別れは、再び一緒に釣りをすることを誓い合う本作らしいさわやかな物。エブリマートにはいなかった鮎川さんとの最後の別れは、まさに釣りこそが人生といった感じの彼女らしさにあふれたもので良い感じ。ヒロインというよりは、釣りのライバルといった感じのポジションの彼女ですが、だからこその魅力にあふれたキャラクターとなったように思えます。
そんな常宏、やはり最終回で気になったのはその病状。前回の意味深な表情や、家族への連絡は地元へ戻ることを意味していたようですが、今回も釣りのシーンでもこれが最後のチャンスなど意味深な発言があり。さらに、最後の鮎川さんとの別れのシーンも、あっさりとしているが故に本当に地元に戻った後、病気を治せなかったなんてオチもちらっと頭に浮かんでしまう。このあたりはあえて濁してちょっと切ないラストにするのかなと思っていましたが、ED後の2年後のパートできっちりと回収しているのが良い展開でした。
本作が始まった時のネガティブな常宏であれば、本当にあのまま東京に残って死んでしまうなんてオチもあったかもしれない本作。釣りと、それを通じて出会った仲間たちとの関係が彼を変え、だからこそこの2年後へと繋がってったのかなと思わせてくるすっきりとしたラストとなりました。
全体の感想
最初こそまさにネガの中心にいた常宏が釣りを通じて周囲の人とかかわっていく中での成長が描かれた本作。最初の常宏は、その場で得た知識を深く考えずに動き続けた結果、最悪の状態に陥ってしまっていた。しかし、それが釣りに向き合う中で、一つ一つの知識を自身の糧へと変え一歩ずつ進んでいくように成長したというのが確かに実感できるお話。
キャラクターの成長というのは、言うだけなら簡単ですが、1クールを通じて確かに変わったなと思わせてくるのはなかなか難しい物。本作では、そんな成長が確かに感じられる作品だったのが良かったです。
また、本作は釣りシーンを中心としたBGMもなかなか良い物。単に流すのではなく、音に綺麗にはまる感じで音を合わせているのが印象的でした。今回のラストの大物を釣り上げるシーンは、まさに本作の最大の山場ともいえるところ、動きの一つ一つに派手ではないもののしっかりとした背景音楽が合わさることで、ラストに向かう雰囲気を盛り上げているようでした。
最初こそ常宏のあまりのネガっぷりにちょっと不安になったものの、最後にはすっきりと終わる良い作品でした。
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