2025年2月19日配信開始、週刊少年サンデー2025年12号で連載された龍と苺228話『長い時を経て』の感想記事です。ネタバレもあるので注意してください。
長い時を経て
明かされる苺ちゃんの過去
ムサシとの対局に決着がついた前回から続く今回のお話。話は本編の現代2125年より64年さかのぼり、藍田苺51歳の頃へと遡り回想へと入る。
苺ちゃん引退時に何があったかを描く中で、当時はまだAIには勝てないと自分でも認めていた苺ちゃんが、AIに勝つという一点以外をすべて捨てて一人研究に打ち込み続けてきたその執念が描かれました。
斎藤ですら、子供や孫たちの前で死ぬことができた人並みの幸せをもてた中で、そんな普通の幸せをすべて捨ててAIに挑もうとしたことがわかる。そして、そんな斎藤も、それでもいつか苺ちゃんがやり遂げると最後まで信じていたのもよいですね。
会長としての苺ちゃんへのサポートは、道玄坂からタッキー、そして、今の志水会長へと繋がっていく。今回の反応を見るに、志水会長はAIに挑むとしてもその勝利できるかどうかまでは信じきれていないようでしたが、逆にそれが過去の不可能をやり遂げた苺を知っているタッキーや斎藤はAIに対する勝利を疑うことなく信じ続けていたという差を描くことにもなっているようでした。そして、そんな繋がりの果てに今回の初のAIへの勝利があるというのは、なかなかジーンと来る展開でした。
これまであえて伏せられていただろう苺ちゃん引退時のやり取りを、一番盛り上がるだろうところで使ってくるのが非常に良いお話でした。
そういえば、道玄坂やタッキーが将棋連盟の会長を務めていたことが明かされましたが、どことなく当時の彼らの性格を見ていると納得できる人選になっていて少し笑ってしまいました。
ムサシ爆発
苺ちゃんのムサシに対する勝利は、CEO面々からしても開いた口が塞がらないといった不可能を可能にした状況。自我を獲得したムサシでしたが、最後の最後で謎の爆発に見舞われてしまう。
このムサシの爆発は、自我をもったAIの処理に体が対応しきれずに爆発したようにも思えますが、今回本田さんが勝負に負けたムサシに対してねぎらいと、自分が研究から外れた直後に爆発したのはちょっと気になる所。
もしかすると、ムサシはあくまで自身の故障により藍田苺が勝てたという状況を作ることで、本田さんを庇おうとして自爆したのかもしれません。
まだまだ続く竜王戦、ムサシとの勝負の結果が世間にどのように受け入れられるのか、次の相手とどのような戦いを見せるのか、まだまだ眼が離せない展開が続きそうです。
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