2025年春より放送開始の作品、米澤穂信による『小市民シリーズ』を原作とし、監督:神戸 守によるアニメ化作品『小市民シリーズ』 17話『ふたたびの秋』の原作未読での感想文となります。アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方は注意してください。
17話『ふたたびの秋』
姿の消えた瓜野君
前回ラスト、小佐内さんの指摘によりなかなか悲惨な様子で去っていった瓜野君ですが、今回はもはや出番すらなく、ある意味全開の話を終えた時点で本作における彼の役割は果たし終えたという事なのかもしれません。
今回のエピソードでは、小鳩君に一連の事件の推理と、犯人に対して何を仕掛けたのか、を明かされていくことに。事件の方は、犯人はやはり氷谷君。日頃のストレス発散のために火をつけてみたら、瓜野君がコラムにて推理を展開、あとはそれに乗っかり探偵気取りで調子に乗る瓜野君を笑っていた、とのことでした。事件現場に関しては途中からは瓜野君が書いた記事の場所をあえて燃やすようにし、その推理が当たったと喜ぶ瓜野君を楽しんでいたとのこと。
氷谷君が瓜野君の兄が消防士という件を話していた話もありましたが、瓜野君がそこに偶然会った関係を見出してくれるよう誘導したのかな、とも思いましたが、そこに関しては単なる偶然で瓜野君が気づいてくれただけなのかも。また、小鳩君が本事件に関わるきっかけとなった河川敷の小佐内さんが残した車に関しては、単にいい場所に燃やしやすいものがあっただけの偶然だったようです。
そもそも、瓜野君がコラムで事件を追う事が出来たのも、その前に付き合い始めていた小佐内さんの助力があったが故という事を考えると、様々な偶然が絡んでしまったが故に大きくなった事件という感じもする。
氷谷君の火付けの件も、犯人である自分の行動で一喜一憂する瓜野君を見ているのがあまりにも楽しく、本編の描写を見ているとむしろそちらに楽しさを見出していたようにも見える。もしかしたら、瓜野君が盛り上げてくれなければ、最初の数件で終わりになっていたなんてこともあったのかな、とも思えてきます。
小鳩君が仕掛けた事
そんな今回の事件、小鳩君は新聞記事を元にして火をつけているという推測の元、新聞記事の火災現場をクラスごとに変えるよう五日市君に指示を出していたことがわかる。それにより、事件現場から犯人が学校内、更にどのクラスの関係者かまでを絞り込む。更に最後には、事件現場を新聞で指定したことで、犯人を誘導することに成功しました。
この小鳩君の作戦の新聞部分を実行したのは五日市君でしたが、実際に燃やせる可能性のある場所、それも燃やしに来る可能性を考えると燃やしても被害者が出にくいだろう場所を複数ピックアップし、クラスごとに差し替えて印刷、配布にも注意を払うというなかなか手間なことをさせられる五日市君。事件後のコラムの記事の瓜野君に向けただろう言葉を見るに、彼も彼なりに相当鬱憤がたまっていたのかもしれません。
ただ、こういった細かい部分まで瓜野君がきちんと新聞部部長として確認を行ってさえいれば、事前に何かやっていることに気付けたという可能性もあり、このあたりも瓜野君の迂闊さが招いてしまった件だったのかなという気もします。
小鳩君は自ら仕掛けた策で犯人を追い詰めましたが、そんな犯行現場に小佐内さんがのは、警備の薄いところをあえて見張っていたから、とのことでどちらかというと偶然より。この二人の子の夜の再会は、そういう意味でも運命的に思えてしまってもおかしくなさそうです。
折角のそんな二人の再会を夜のワンシーンで終えてしまうのはもったいなかったからか、周囲の形景色は川に足を浸していた李、明るい日差しの中で行われたりと二度三度と切り替わる。この演出、1期の時は二人でいる時によく見られた気がしましたが、2期では初めて見た気がします。改めて思うと、二人で会話している時、表向きは静かな二人ですが、内心相手と一緒にいられることに浮ついていたことを表していたのかなという気もします。今回、この演出が始まったのは小佐内さんが小鳩君に彼女の件を聞き始めたタイミングから。さらに、さりげなく小佐内さんが、小鳩君の彼女の仲丸という名前を知っていたというのも、小鳩君のことを1年気にかけていたのかなと思わせる要素でした。
この二人の会話は、小鳩君はあくまで白馬の王子様がやってくるまでの次善であるし、素直でないながらももう一度一緒にいたいと伝える。それに対して小鳩君は、「小佐内さんは必要だと思う」、というこれまでの仲丸さん相手の態度を見ているとガラではない発言が飛び出す。この瞬間、小佐内さんは顔を後ろに背け一瞬その表情が隠れてしまいましたが、意外と乙女な小佐内さん、小鳩君の予想外に大胆な発言に、見せれない表情をしてしまっていたなんてこともありそうです。
ちょっと余談ですが、小鳩君が小佐内さんが復讐で車を燃やしたのではないか?と問いかける流れは、自分が最初そう思っていたこともあり思わず笑ってしまいました。
栗きんとんとマロングラッセ
そして場面は移り変わり、再び共に動き出した二人は喫茶店へ。そこでは、タイトルにもなっている栗きんとんのお話が語られる。
栗きんとんは、繋ぎとなる水までも栗から出てきたもの、ある意味栗から変わることなく出来上がったものというのは、ある意味今の自分たちはそのままでよいという事を意味しているように思えました。このくだりは、以前のマロングラッセの物との対比となっており、瓜野君と言う佐藤に使って小市民になろうとしていたこの1年間の小佐内さんの考えもまた変わったことを意味しているように思える演出でした。
なかなか微笑ましいお話でしたが、最後に何やら小鳩君がもう一つ事件の要素に気付く。それは、瓜野君に聞こえた電車の音が、あまりに大きすぎたという事。つまるところ、小佐内さんは偶然あの場にいたわけではなく、音を鳴らす道具を使ってあえて電車が来たと誤解させたのではないかというもの。それに関しては、まさにその通り。
そんなことをした理由、彼女が瓜野君に復讐を誓った理由も最後には明かされました。無音の中で描かれたあの言は、音がないからこそ感じられる、そんなことでそこまでするの?という小佐内さんの怖さと、彼女の中にある乙女心が如実に伝わってくラストとなっていました。
冬期限定ボンボンショコラ事件へ
今回で秋のお話は完結、次回は冬期限定ボンボンショコラ事件へと話が進むようです。何やら予告映像では、車に牽かれた小鳩君と共に、それに絡んで似た状況だった過去の事件が回想される様子。
どうも以前に語られていた小鳩君が小市民を目指すきっかけとなったエピソードが語られるようですが、そこに今の小鳩君の事故が重なり何が描かれるのか楽しみです。
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