2025年春より放送開始の作品、米澤穂信による『小市民シリーズ』を原作とし、監督:神戸 守によるアニメ化作品『小市民シリーズ』 18話『わたしたち本当に出会うべきだったのかな』の原作未読での感想文となります。アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方は注意してください。
18話『わたしたち本当に出会うべきだったのかな』
冬期限定ボンボンショコラ事件
前回で秋のお話も終わり、いよいよ今回から冬のお話がスタート、なのですが冒頭からいきなり小鳩君が大怪我。何やら土手の上を歩いていたところを車に牽かれてしまうという衝撃的な流れから始まる。大腿骨の骨折となかなかの大怪我、更に時期が受験シーズンということもあり、小鳩君からしてもなかなかの痛手となってしまった様子。
しかし、事件のシーンの小鳩君、きっちり小佐内さんを庇って突き飛ばして助けたが故に牽かれてしまうあたりは、当たり前ですが小佐内さんを大切に思っていることがよく伝わってくるシーンでした。
そんな中、小鳩君の元に最初にお見舞いにきたのは健吾。ちょうど前々回の秋のお話では、小鳩君とは腐れ縁で仕方なく付き合っているといった雰囲気を出していた彼ですが、こういう時に一番にやってくるというのが、やはり二人の関係がよく出ている。小鳩君の方も、珍しく素直にお礼を言いながらも、ガラではないと思った故か、頭を打ったからという誤魔化し方、それを見て笑う健吾というのがなかなか良い感じです。
そして、小鳩君の事故の情報を健吾に伝えたのは、前シーズンでも活躍していた吉口さん。何やら小鳩君と小佐内痴さんの情の縺れと推測していたのは彼女の趣味ゆえなのでしょうが、毎度情報の速さが凄いですね。
そんな小鳩君ですが眠っている間に、小佐内さんもお見舞いに来ていたようで、
ありがとう
ごめんなさい
ゆるさないから
というメッセージカードを残す。このメッセージのありがとうは、シンプルに助けてくれてありがとう。次のごめんなさいは、おそらく小鳩君に突き飛ばされた小佐内が落ちた瞬間一瞬ふくれたような表情を見せており、突き飛ばされたことを一瞬でも恨んで(なんなら復讐計画が頭によぎって?)ごめんなさい、という意味合いでしょうか。更には、その勢いのまま、ゆるさないから、と書いてしまいましたが、自分がそれを書くと何やらニュアンスがおかしくなりそうなのに気づき後から犯人をと付け足した感じが可愛いですね。
ということで、小鳩君を牽いた犯人に対して復讐を始めようとする小佐内さんといった感じで現代のお話は進んでいくようです。
日坂祥太郎
健吾との会話の中で、小鳩君の中学の同級生の日坂祥太郎なる人物の名前が上がる。バトミントンで有力な選手とのことで、小鳩君は海外に留学したと聞いていたそうですが、健吾の話では自殺してしまったとのこと。ただ、あくまでそれも先輩に聞いた話だそうで、正確にはわからないまま。ただ、彼の話を聞いた途端に、珍しく小鳩君が動揺した様子を見せており、小鳩君からしても特別な人物であることはわかる。そして、今回は日坂君も中学時代に同じ場所で事故に巻き込まれ、当時何があったかが描かれることになりました。
中学時代の小鳩君ということで、今のように小市民たろうという姿勢を持つ前の姿ということで、事件に対するのめり込み方、推理自体を楽しんでいる様子が多分に見受けられました。特に、事情を聴くときの容赦のない感じや、お見舞いに来ているはずなのにいつの間にか、事件の事を事細かく聞き調べているシーンあたりは、その表情の描き方も相まって周囲からウザがられてしまうというのもよくわかる。おそらく今回のお話が今の小市民を目指す彼の切っ掛けとなりそうですが、果たしてここから何があるのか気になるところです。
小佐内さん登場
過去の事件では、実際に牽かれた日坂君とその現場を見ていたという2年生の生徒の二人が話に上がる。更に、事件現場を調査していた小鳩君は、何やら事故現場の道沿いに英単語カードを発見。そこに書かれていた単語は『certainly』、『wrong』、『fight』となっており、これらの単語、すべて中学3年生レベルの単語。事故にあった話を聞いた感じ日坂君がこれを落としたとは思えず、このあたりから日坂君と2年生以外に3年生の生徒がその場にいた可能性を考えていたのかもしれません。
最終的に、2年生に話を聞く中で、2年生ではない生徒が愛大はいるように階段を上ってきており、車をよけるために落ちたといったことが語れる。2年生はその子の顔が見たことがないから同学年ではないと判断し、1年生ではないかと推測を立てていました。
そして、車の事を図書館で調べるうちに、すっと影から小佐内さんが姿を見せる。小鳩君は咄嗟に小佐内さんが現場に自他女生徒だと判断。おそらく、その服装が冬服で、事故現場から転がり落ちた関係で夏服が汚れ使えなくなってしまったがゆえ、更に2年生が1年生がそこにいたと話と落ちていた3年生の単語カードという違和感から、小柄な女性とという条件を考え付き、小佐内さんがその女生徒だと判断したといった感じでしょうか。しかし、第三者として登場する女生徒が話の鍵だとは思っていましたが、まさかこのタイミングで小佐内さんが登場するとは思っていなかったのでちょっと驚いてしまいました。
過去の事件と今の事件
同じ現場で起きた交通事故ということで、何やら似ている過去と現代の交通事故ですが、何やらその間には一つ大きな違いがある。
過去の事件では、日坂君にぶつかった車はブレーキをかけており、ほとんど止まった状態だったと話をしていましたが、小鳩君が引かれた事件は、どうにもブレーキをかけていたようには見えない。冬の話ということで道路沿いに雪が積もっていたとはいえ、足元を滑らす程かというと怪しく見え、どうにも小鳩君、もしくは、小佐内さんを狙って牽きに来ていたようにも思えます。また、この時期が受験をダメにしてしまう時期だったというのも、悪意があるように思え、何か二人のどちらかに恨みがある故の行動のように見えてくる。
そういえば、事故のシーンを改めて見てみると、小鳩君を引いた車はナンバープレートまでばっちり映っており、木良 550 ひ 76-144、さらにプレートが黄色なので軽自動車であることまではわかる。更に車体の感じからどうやらワゴン車、色こそ白で過去の事件の証言では車は水色とのことでしたが、夕暮れで見た目が違ったかもとのことで、おそらく青っぽく見えていた白い車と考えると同じ車なのかもしれません。
このあたりから考えると、同じ現場で起きた日坂君の事件が、現代の事件に絡んでくるように思えますが、今のところはまだまだ分からないことが多い。ただ、日坂君は過去の事件をあまり掘り下げてほしくなさそうだったことを考えると、事故の犯人は日坂君の知っている人だった可能性なんかもあるのか。
また、何やら小鳩君が謝罪したいと思っていたという態度を見るに、この調査の果てに彼を傷つけてしまう結果につながったことも予想される。そんな彼が自殺しているとなると、過去の事件が日坂君の自殺に繋がり、その流れからの復讐として小鳩君が今回狙われた、と考えると一応は筋が通らなくもない気はしますが、まだまだ情報が不足。ですが、このあたりに関しては、次回以降より事件の調査が描かれる中で見えてくることもありそうです。
おそらく、小市民シリーズ最後のエピソードとなりそうな冬のお話。果たして過去の小鳩君は何をしてしまったのか、そして、今の小佐内さんとの関係がどうなっていくのか、ラストに向かっていくお話が楽しみです。
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