Turkey!
2025年夏より放送開始。監督:工藤 進、脚本:蛭田直美、キャラクターデザイン・総作画監督:武川愛里によるボウリング×タイムスリップのオリジナルアニメ、Turkey! の5話『すれ違って、フックボール』の感想文となります。
アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方はご注意してください。
すれ違って、フックボール
三鷹希の悩み
今回の話で焦点が当たったのは、ボウリングに対していい加減な接し方をしているように見えていた三鷹希。個人的に、彼女が今回見せた内面の話は結構好みなものでした。
いい格好をしてしまっても、それはあくまで周りに合わせたものと悪ぶってしまい、そこには確かに後悔もある。しかし、そんな彼女の根っこにある本心は、そうやっていい格好をできるいい人になりたいというもの。そんな二段底のように複雑だけど、どこか理解できる部分もある心持ちがなかなか深みがあってよい感じでした。おそらく、この彼女の複雑な心境、普段は周囲には見せることもなく、悪ぶった姿を見せ一人で抱えてしまっている。そして、何かあるたびについそれをやってしまい、ちょっと後悔というのを繰り返している姿も浮かんでくるようでした。
今回は、庵珠を助ける際にその心持ちが語られ、苦しい状況で一度は諦める言い訳として悪ぶろうとしてしまうも、それでもなおいい人を目指したいという気持ちで進むという結果につながる。そんな彼女の悪ぶってしまう癖、皆に合わせて買っただけと言いながら、皆の見ていない所ではとても大事にしていたマイボール、一見聞いていないふりをしながらも、ちゃんと聞いている利奈のアドバイス等々のボウリング部での活動の中でもつい出してしまっていたんだろうなというのも見えてくるのも面白い。冒頭の流れでは、三鷹はつい悪ぶってしまったが故に、本当は大事にしていたマイボールを崖下に投げることを許可してしまう。しかし、その内側ではどれほどの後悔があったでしょうかとその内面をつい推し量ってしまいます。
そんな三鷹の複雑な悩みが語られた今回のラスト、庵珠を助けるために自分のいい人でありたいという気持ちを認めるシーンで、一度は投げ捨てた相棒のボールが都合よく出てきてくれるという流れがありました。ここは、本当に都合のよい展開ではありましたが、本人の自分の気持ちに向き合う事で状況が前向きに転じたり、本当は大事に思っていたマイボールが、その気持ちに答えてくれたように見える演出は見ていてスカッとする流れでした。
ただ、この相棒を見つけるシーンはよかったのですが、本作特有のボウリングで戦国時代のトラブルを解決するという流れがシュールで笑ってしまうというのが困りどころ。キャラの心情の描写は結構丁寧に描いている本作ですが、トラブルをボウリングで解決するくだりだけは、どうにもその絵面に笑うと同時にちょっと困惑するところも出てしまいます。
同じく複雑な利奈
前回皆への気持ちを認められたように見えた利奈。前回の流れを汲んで今回からは皆に少しは素直に接するのかな…と思わせておいて、これまで通りの冷たい態度…にちょっと驚く。しかし、やはり前回の出来事は彼女の気持ちに与えた影響も大きかったというのが最後で改めてわかるのがよい感じでした。
途中、食事の最中突然立ち上がりそこから再び座ってしまうシーンは、正直何をしようとしたのか全く意図が読めなかったのですが、最終的に彼女がやりたかったのは隣に座ってお礼を言うということがわかってみると彼女らしさが出ていたことがよくわかるシーンでした。ある意味利奈も、それまでの態度から簡単に素直になるというのは難しいことであり、こういう面はある意味つい悪ぶってしまう態度をすぐには直せない三鷹と重なる所もあるように見える。ある意味、似たもの同士な面もある二人だったという事なのかもしれません。
三鷹が利奈のボウリングの教えを聞いていないようでちゃんと聞いていたから、だこそ最後の投球に成功したという流れは、三鷹と利奈、二人の話をつなぎ合わせてくれていたのもよかったですね。
麻衣の両親
今回すごくさらっと、麻衣の両親が既に他界していることについて触れられました。この事実がわかると、OPで誕生日と火災現場が重なる演出なんかの意味が改めてわかったように思えます。
そして、彼女のターキー後のスネークアイのジンクスに関わる話も、彼女の両親に関わるトラウマのようなものが影響していることも改めて推測できる。ピンたちを奥の暗闇にある家に帰す、しかし、二つの内一つを選んで落とすという事はできない彼女の心理というのは、両親を失った時にあった出来事に関係していそうです。
二者択一、どちらかを選ばないといけない状況で選ぶことができない麻衣。おそらく、ここからの本編でもスネークアイのようなどちらかを選ぶ選択を突き付けられるはず、とはいえ、一話で既にその二つとも取り切ろうとする気持ちは見せていた彼女が、どのような二者択一を突き付けられ乗り越えていくのか、が本作の鍵になっていきそうです。
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