Turkey!
2025年夏より放送開始。監督:工藤 進、脚本:蛭田直美、キャラクターデザイン・総作画監督:武川愛里によるボウリング×タイムスリップのオリジナルアニメ、Turkey! の6話『飛び越えて、リバースフック』の感想文となります。
アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方はご注意してください。
飛び越えて、リバースフック
二つの時代の価値観の違い
いよいよ6話と全体の半分がすぎた本作、戦国時代としての要素が本格的に描かれ、いよいよ時代を超えた女子高生たちも相応の覚悟を決める必要が出てきそうな予感がする話となっていました。
冒頭から寿桃の許嫁にまつわる話から始まり、てっきりこちらが今回の話の軸になるのかと思いきや、今回は一ノ瀬さゆりに焦点が当たるお話。
まず一番に描かれたのは、現代の女子高生と当時を生きる人たちの価値観の違い。寿桃は許嫁を当たり前のように受け入れており、また、傑里や自らが女性であることを捨てて生きることに何の迷いも持っていない。それどころか、二人はそのことを誇りのように感じているというのは、当然今を生きる女子高生たちからすれば、あっさりと理解できるものではない。この違いを理解できていなかったからこそ、麻衣もそれでいいのかと寿桃の元に押し掛けてしまいましたが、寿桃との話の中で相手の価値観を理解し自分の行動を反省するという流れになっており、決してどちらの価値観が正しいというわけではなく、時代に即した考え方というものがあるというのをきっちり描いているのはなかなか良かったです。
そして、そんな序盤から価値観の違いをきちんと描いていたからこそ、おそらく、今回一番描きたかったであろう、現代との最たる違いである命の価値観という話にすんなりとつなげられたように感じます。
命を奪う事への忌避感から動揺した一ノ瀬は、自分が未来から来たこと、未来は命を大切にすることを話してしまいますが、最終的に傑里も今の血なまぐさい世界がそんな平和な世界に繋がるという事を喜んでくれているというのもよかったですね。自らを怖がりであると称する彼女であるからこそ、本当にそんな恐れるものがない世界を望んでくれているようにも感じられます。
そういえば、今回里の当主である傑里が女性であるという事が明かされました。これに関しては正直、序盤からそれとなく女性らしさを感じていたこともありさほど驚くことなく受け入れることができる展開でした。ただ、改めて思ってみると元々女性的に感じられる絶妙な演技を心掛けられていたようにも思え、声を担当される井上喜久子の技量の高さのようなものを思わず感じてしまいました。
一ノ瀬の過去と車?
今回、一ノ瀬が命を奪う事に強い忌避感を感じている様が描かれましたが、単に現代の女子高生としての価値観という以上の意味があるのかなと思わせるシーンが僅かに挟まれていました。
それは、一ノ瀬が落書きのような赤い線で花が散る様や、自らが見た生首を回想しているシーン。何か違和感があり見返してみていると、車が人を牽くような絵が混ざっているようです。
現代を生きる女子高生であるが故に、戦国時代の命を奪うという価値観を恐れるというだけでも十分今回の一ノ瀬ちゃんの心情は説明できますが、彼女が命を奪う事を強く忌避していたのには、現代でも車の事故で大切な人を失っているからなのかもしれません。
前回の麻衣の両親が死んでいたという件がさらっと明かされた話もあり、どうやら一ノ瀬の方も何やら過去にあってもおかしくはなさそうですし、今後の話で何か明かされることもあるのかもしれません。
相変わらずのボウリング描写
今回の現代と過去の価値観の違いを描く中で、過去に来てしまったが故に、手を汚す覚悟、命を奪う選択をすることになってしまった一ノ瀬、という流れはなかなか丁寧な描写でよかった今回のお話。しかし、前回に引き続きそこにボウリング要素が入ってくることがどうもノイズに感じてしまいます。
これまでの描写から体格に恵まれていたという話は、確かに言われてみればその通りだったな…となるのは、ちょっと笑ってしまう程度でよかったのですが、いざ傑里の命の危機が訪れてみると、やっぱここでボウリングなのか…?という疑問が頭によぎり、都合よく丸い石があり投球へと移る。
一投目は外してしまう一ノ瀬ですが、麻衣ちゃんの二投目があるという言葉に勇気を貰い、二投目をなげ野武士にぶつけることに成功。余談ですが、一ノ瀬の頭に浮かんだ麻衣の回想シーンを見た瞬間、麻衣ちゃんは絶対にこんな状況を考えて二投目があるという言葉を伝えていないんだろうな、などと思ってしまい、笑う所ではないはずなのに少し笑ってしまいました。
やはり、本作どうにも無理やりボウリングを繋げていく流れが挟まってしまうのが、気になってしまうというのが本音。今回一ノ瀬が覚悟を決めた展開が挟まれたことから、ここから先は他のメンバーに対しても戦国時代の現実と直面せざる負えない展開がやってきそうですが、やはりそのあたりもボウリングで解決していくことになるんだろうなと思うと、果たしてどんな絵面が出てくるのか、楽しみなような、不安なような複雑な気持ちになってしまいます。
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