2025年8月18日にジャンプ+にて掲載された『タコピーの原罪』等で知られる、タイザン5による新作読み切り漫画『ファイティングガールズ』の感想記事です。
ファイティングガールズ
格闘技にかける小梅とティアラ、二人の女の子の関係を描いた作品。前半は、小梅側からの視点で自分より常に上を行くティアラちゃんへの執着が描かれ、空手、そしてMMAへと進んでいく姿が描かれる。彼女の眼には、常にティアラの事が映っており、ティアラがいたからどこかで諦めそうになる瞬間も、前へ進むきっかけになるというティアラへの小梅の想いが描かれる。
そんな本作で私が特に魅力を感じたのは、そんな小梅に追いかけられていたティアラ側の内心がわかっていく作品の後半パート。小梅からティアラへの視点の転換を挟んで、追いかけられていたティアラ側のお話が描かれる中で、自らの境遇に苦しんでいた彼女が、あらゆる場面で自分を追いかけてきてくれる小梅に救われていたとわかるという話の流れがとても美しい。
小梅視点で見ていたティアラは、SNSの描写やその普段の態度も非常にシンプルでクールに見えている。しかし、小梅からのティアラへの態度もいつの間にか周囲の人から見るとクールに見えるようになっていったというのが、お話の転換点として実によく行かされているように感じる。
ここで小梅も周囲からはクールに見られるようになったという描写を挟むことで、ティアラも小梅と同じように周囲からクールに見えているだけという可能性を読者に見せているように思える。小梅とティアラ、お互いに似た部分があるのでは?と思わせることで、小梅に追いかけられるティアラが当時何を思っていたのか?と疑問が浮かぶ。そして、彼女の引退表明と、その答え合わせのような彼女の過去の視点へと続いていくというのが話の転換点としてよくできているように思えました
また、二人のSNSの描写も、お互いに相手のアカウントを意識して行動し続けているのに、絶対にフォローはしないという距離の取り方が実にこの二人らしい関係を表しているように思えます。
幼いころから同じ空手道場に通いながらも、仲良くしていたわけでもなく、相手の事を深く知ろうとしたわけでもない、ただひたすらに同じ道場で互いに一方通行なライバル意識を向け合い続けてきた二人の不器用な関係。しかし、そんな二人の関係だからこそ、最後の最後ティアラが本当に苦しい時に再び立ち上がるきっかけになれたというオチが非常に良いお話でした。
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