Turkey!
2025年夏より放送開始。監督:工藤 進、脚本:蛭田直美、キャラクターデザイン・総作画監督:武川愛里によるボウリング×タイムスリップのオリジナルアニメ、Turkey! の7話『抱きしめたい、ロフトボール』の感想文となります。
アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方はご注意してください。
抱きしめたい、ロフトボール
さゆりの伝えた話
初午というのが生理を指すこと、傑里が女性であること、前回さゆりが知った事実を他のメンバーに伝えることから始まったことから今回の話は始まりました。自分一人では抱えきれないとして語ったさゆりですが、前回のすべてを伝えたようで、自ら投げた石で人を殺す手助けをしてしまったという事までは語っていないのがなかなか意味深。これは彼女が命を奪う重みは誰かと一緒に抱えるものではなく、自分一人で抱える覚悟、彼女の強さ故という事なのかもしれません。
そして、今回改めて寿桃の生理が遅れているという話が改めて描かれたのもちょっと気になる所。OPの寿桃は、何やら首に小刀をかけ自刃しようとしているシーンが挟まれていますが、この生理の遅れが単に遅れているだけでないが故に、自らの家でのお役目を果たせずOPの自刃に繋がるなんてこともあるのかなと思ってしまいました。
OPで意味深に手にしていた七瀬の手帳の件が拾われたり、これまでもOPにまいた伏線は極力拾っている本作。おそらく重要なシーンであろうあの寿桃の自刃が何故おきてしまうのか、今後の展開に向けて気になる要素となりそうです。
夏夢の帰郷
今回は、七瀬を話の中心に据えた話となっており、OPでも関わっている夏夢が帰郷するお話となりました。夏夢の帰郷の際には、以前の話でもそこに絡んで気を荒立てていた庵珠は当然として、これまでしっかりした様子を見せていた寿桃、傑里までも妹らしい姿を見せていた当たり、彼女がどれほど慕われていたのかよくわかりました。
そんな今回描かれたのは、七瀬から夏夢に対する忌避感。ボウリング部の面々が語っていた通り、これまでのひょうひょうとした七瀬の態度から予想できないほどの人を嫌悪する感情がにじみ出る表情がなかなか衝撃的。
しかし、七瀬から夏夢へ対する忌避感は、自らの父親が家族を置いて夢を追ってしまったという状況を、夏夢が家族を置いて旅芸人についていったという状況に重ねたが故。OPで生徒手帳を握りしめているシーンは、意味深で果たしてそこにどんな意味があるのかと思っていましたが、そこに入っている父の写真こそがその本命だったようです。
過去と今には価値観の違いがあり、それを寿桃たちが受け入れていることを前回明確にしていたからこそ、今回の夏夢がそれを受け入れられない事の異質さ、そして、その責任から逃れたことを七瀬が怒る理由が際立ったように思えます。
同時にあってよい二つの感情
今回は、相変わらずの登場人物の気持ちの揺れ動きが非常に丁寧に描かれたお話となっており、ここまでの話の中で一番好きな話になりました。特にそれを感じたのが、七瀬と夏夢の最後の語らい。
旅芸人が帰ってしまった際に夏夢が感じ寂しさと帰れてよかったという二つの感情。一つの出来事に対する気持ちは一つである必要はないという話が、そのまま七瀬の父に対する感情と重なっていくという流れは非常に丁寧。父親がいなくなって寂しい、しかし、父が夢を追えてよかったと喜ぶ彼女の優しさもその心の中には同時にある。それをそんな娘を持つ母もきっと同じように思っていると、七瀬自身の気持ちの整理にまでつなげ、七瀬の自分の気持ちとの向き合い方を家族にまで広げ、彼女の中の大きな問題の答えとなっていのはとてもきれいな解決となりました。
今回の「抱きしめたい、ロフトボール」というタイトルはまさに今回の七瀬とその父との関係を的確に表したものだったと改めてわかる。ロフトボールとは、ボウリングに置いてマナー違反となるボールを高く投げ上げてしまう行為とのこと。このマナー違反なロフトボールは、自分たちを置いてしまった七瀬を表しており、それでもなお、抱きしめたい、大切に思っている相手という相反する感情が表されているようで、まさに今回のお話のサブタイトルといった感じがしますね。
ボウリングとボーリング
毎度、ボウリングによる解決が行われがちな本作ですが、今回はボウリング要素による解決は行われず、代わりに1話でもちらっと触れていたボーリングがオチとして拾われることになりました。このあたりは、元よりボウリングへの興味が薄めだった七瀬のお話であるが故という感じもする展開。
温泉を掘ろうという麻衣の突然の提案は、正直女子高生にどうにかできるのか?と思ってしまうものでもありました。果たしてどうするのかと思っていたところ、まさかの七瀬の父親が井戸掘りをしていたという件が改めて拾われる。ここは正直、こんな細かい部分までしっかり拾い上げるのかと感動したところで、今回七瀬に関わり広げていった話を余すところなく使うオチといった感じで、まさに今回の話の締めにふさわしい展開でした。
ボーリングや、温泉といった要素も、1話でボーリングを指摘したのが七瀬だったり、ここまでも温泉の話もちょこちょこ拾っていたりと、ある意味この展開のための仕込みを丁寧にしていたが故に、すんなりと受け入れられる話となっており、何気ないこねたかと思いきやそれが生きてくるというのが良かったですね。
旅芸人は七瀬の父親?
今回のラストでは、先に帰った旅芸人とは父親なのでは?という疑問が最後に残される。関わらず変えないという考え方が七瀬とよく似ていたり、最後に匂わせるキミという呼び方が共通していた点なんかは実にそれらしかったです。
これは今回の語られた話からは、あくまで推測することしかできない話。しかし、仮に前に来ていた人が七瀬の父親であったとしたなら、帰ることだけを考えていたが故に父が関わることができなかった皆の願いを、二投目としてやってきた娘が叶えたことにもなりそうです。
あえてぼかされた七瀬の父親が前に来ていたタイムトラベラー疑惑。正直、このまま謎のまま終わってもよい塩梅の話です。しかし、今後七瀬たちが現代に戻るだろうことを考えると、このあたりは最終回あたりで明かされるなんてこともあるのかもしれません。
今回残された謎
夏夢が七瀬だけに語り、視聴者すら聞くことができなかった姉妹がこの土地を守り続ける理由。そして、5人姉妹と言われながら、キツネ面で顔を隠し姿を見せない5人目の姉妹朱火の存在。このあたりが、今後の展開の鍵となっていきそうです。
朱火に関しては、利奈のお話の際に一度、利奈に姿を見せていましたが、まだまだ何かある様子。順番を考えると、次回あたりで再び利奈と共に話に関わってくるなんてこともあるのかもしれません。
里の秘密に関しては、もしかするとタイムスリップに関わる何かなんてこともあるのかも。ともあれ、どちらも今後の話の鍵となっていきそうです。
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