瑠璃の宝石
2025年夏より放送開始。渋谷 圭一郎により、HARTAにて連載されている漫画『瑠璃の宝石』を原作とし、監督:藤井 慎吾により制作された鉱石を題材としたサイエンスアドベンチャーアニメ。作品のネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方はご注意してください。
最終回 想い出は石とノイズと
鉱石ラジオとおじいちゃん
最終回で描かれたのは、鉱石ラジオと瑠璃ちゃんのおじいちゃんに関するお話。思えば、1話で瑠璃ちゃんが石に興味を持ったのが、そもそもおじいちゃんが水晶を山でとっていたという話でした。最終話で、再びおじいちゃんに関するエピソードが来るというのはいうのは、実に締めにふさわしいお話という感じがします。
最初は他に石がないかとおじいちゃんの集めていた石を倉庫で探す瑠璃ちゃんですが、発見したのは鉱石ラジオ。最初は、そもそもこれは何なのか?という疑問から始まり、凪さん達に話を聞く中で、自作のラジオであることを知る。
今回は、ある程度の情報を貰いつつも、そこから忙しい凪さん達が手を貸してくれるのを待つのではなく、自分たちで動き始めるというのがなかなか良いシーン。これまでの鉱石採集とは異なる全く未知の分野にヒントこそ貰いながらも自分たちだけで学び、取り組んでいくという流れは、これまでの瑠璃ちゃん達の成長を感じさせるものでよかったです。
また、お話としても鉱石ラジオに使う石以外の石が、なぜか箱に入っているという流れが、話の中に小さな謎を生んでいてよい感じ。冒頭のお祭りの話など、こまごまと語られていたものが最後に繋がっていく流れが、面白いお話でした。
ちょっと余談ですが、石に上った件を覚えていないという話に、張り合いのない孫ねと言われていましたが、その後の、鉱石ラジオを落として壊してしまったかも、という瞬間にも特に動じることもない姿は、まさにお母さんの言った通りでちょっと笑ってしまう。とはいえ、こういう突拍子もなく軽いところが瑠璃ちゃんの良いところでもあるようで、きっとお爺さんも困った顔をしつつも喜んでいるのではないでしょうか。
そういえば、瑠璃が思い出した記憶では、岩に上った瑠璃に慌てている二人の姿がありましたが、当時の瑠璃の行動に慌てた祖父と一緒に慌てていたのがこの神主さんだったのかもしれません。
ラストシーン、神社の神主さんが同じ鉱石ラジオを使ってラジオを聞いているシーンで終わるというのは、直接的な描写こそほぼないものの、おじいちゃんと神主さんの交流を匂わせつつ、世代を越えた思わぬ繋がりが最後に生まれたことを表しているようでよかったです。
瑠璃の宝石全体の感想
最初は石の事など何も知らず、町中で買い物に行くような格好で山に望んでいた瑠璃ちゃん。そこでの凪さんとの出会いを経て、ただ綺麗なだけだった石に対する興味を深め、石の世界へと足を踏み入れ成長していく流れが面白い作品でした。序盤から山に入るのにそんな格好でいいのか?という瑠璃ちゃんでしたが、少しずつ山に入る恰好が本格的になっていくのも、山に入ることの理解を深める成長を感じさせて良い感じ。
サファイアのルーツを探る話では、川の石を漁る地道な調査を繰り返していましたが、こういった部分に疑問を抱きながらも最後までやり遂げるという点も非常によい。特に途中で一度失敗してしまったかもしれない、という事実に気付いた段階で、きちんとそこに向き合い、迷いながらも再び調査を行うという誠実さが良かったです。
そんな彼女の、一番の魅力はその行動力の高さ。悩んで足を止めてしまいそうな場面でも、常に前向きに踏み出していく彼女だからこそ、様々な鉱石を発見できた幸運を掴んでいくことができたようにも思えます。
そして、彼女の行動力は周囲の人にも影響を与えていたようで、最初はデスクワークで知識を蓄えていた伊万里さんがフィールドワークにも興味を向けるきっかけにもなる。また、途中から登場した瀬戸さんに対しても、理解者がいない中で悩んでいた彼女の気持ちを切り替えることに繋がり、初登場のスンっとした感じとは全く異なる表情豊かな瀬戸さんの描写はその内面の変化を如実に表しているようでした。
ある意味で、向こう見ずに突っ走ることができる彼女だからこそ繋げた人との関係といった感。最終回での鉱石ラジオでの人と人とのつながりの話もどこか瑠璃ちゃんを連想させる者だったようにも思えました。
最初はただ石を集めるだけだった瑠璃ちゃんが、いつのまにやら自分の考えで行動をしており正解を掴んでいく姿は、凪さんも横で見ていて楽しそうでしたし、それゆえにどこか期待をしていそうなのもよかったですね。
作品全体の映像のクオリティも非常に高く、遠景でこそ可愛く崩されているシーンもありましたが、キャラクターは常にかわいく描かれていてよい感じ。とはいえ、その本領は鉱石や背景、特にびっしりと描かれた山中の背景描写は、自然を取り扱う作品として手を抜くことができないこだわりの部分だったという事なのかもしれません。
1クール、少しずつ成長していく瑠璃ちゃんの描写もよいものながら、同時に自然の中の石という存在へ興味を惹かせて、毎話楽しませてくれる良い作品でした。
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