世にも奇妙な物語 35周年SP 秋の特別編
2025年11月8日に放送された世にも奇妙な物語 35周年SP 秋の特別編 の中の『止まらなければ生きられないゲーム』の感想記事です。ネタバレも含むのでご注意ください。
止まらなければ生きられないゲーム
徳永正夫なる人物が、稲垣と呼ばれる友人の連帯保証人として1億円の借金を背負ってしまったところ、何やら合図を受け30秒停止することで、30億貰えるゲームに参加することになるというお話。
あらすじを見た時、そして徳永が薬を撃たれ意識を失った時は、この後攫われてだるまさんが転んだのようなデスゲームに参加させられるものだとばかり思っていました。しかし、今回のゲームは、日常生活を送る中で30秒停止するというゲームだったのはなかなか面白いところ。耳のカプセルは流石に気づけよ、と少し思う事もありましたが、そもそもこのゲーム自体がファンタジーなのでどちらかというと笑いどころという印象。
30秒という普段意識しづらい時間を停止させられることで何が起きるのか?というケースが複数語られる。すぐに思い付く死の危機を前に30秒止まっていられるのか?という話以外にも、そもそも普段の生活の中で突然30秒止まるとどれだけ不都合なことが起きるのか、を様々なパターンで見せられ、普段意識しない30秒という時間、それを捨てることでどれだけ不都合が起きるのか、というのを見せられるのが面白い。個人的にはエレベーターでの30秒停止は、止まること自体は問題ない中で発生する重圧が感じられて好みでした。
ただ、今回の30秒クリアできない毎に一人脱落が確定という設定は、ちょっと無理があったような気もするので、途中で、30秒たってもカウントが減らない回が1回あってもよかったんじゃないかとも思いました。
様々な30秒停止をこなす中、目の前につるされた30億という賞金に狂っていく徳永。一つ一つ30秒の停止を達成していく中で、突然の板垣の裏切りに遭遇。こちらはそもそも最初に徳永に借金を押し付けて逃げるような人間だったということもあり、割とするりと受け居られるもの。しかし、重要なのはその後のトラブルで板垣の死を見過ごしてしまったという言う所。いよいよ、人を一人見殺しにしてしまった徳永にこのあと何が待ち受けているのか、というのは期待させる展開でした。
ちょっと残念なオチ
ただ、ちょっと残念だったのがこの話の最後のオチ。妻のユリもまたもう一人の参加者だったというあたりは、びっくりする展開ではありましたが同時にちょっと唐突感も感じさせる。序盤で語られていた桃アレルギーの件も最後に拾われましたが、こちらもどうにもとってつけたような印象が残るお話でした。
本作の徳永に対する30秒停止の声は、常に徳永が行動するかどうか際どいタイミングで訪れており、徳永に対してだけ異様な都合の悪さは話の中で大事な部分なのかなと思って見ていました。それゆえに、この30秒停止というと引き換えに、何かを捨て続ける徳永が、最後の30秒停止で何を引き換えにするのか、逆に何かのための30億と自分の命すらも引き換えにできるのか、というような葛藤を描くものだと思っていというのもあるので、ラストの妻のユリによる殺害されてしまうという展開はちょっと面白みに欠けるものでした。
また、徳永自身が死んでしまうのは、目の前で倒れた板垣を見捨てたが故の因果応報とも取れるお話なのですが、そうであるなら徳永を殺したユリも因果応報な結末を迎えるべきだったのでは?と思ってしまうのも残念だった点。
徳永は桃を口にくらってもゲーム自体は達成していたということもあり、次のゲームはある意味永遠に止まっていられるもの。次のゲームは永遠に動けない徳永を相手にすることになるユリ側も人を殺した報いを受けるようなバッドエンドでもよかったんじゃないかななどと思ってしまいました。
30億という途方もない金額を前に、30秒という貴重な時間を代償にしていくパートは先の展開を期待させるものでしたが、最後のオチに関してはちょっと残念という印象が残るお話でした。


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