2026年1月30日に公開、機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイのキルケーの魔女の感想・レビュー記事です。ネタバレも含みますので注意してください。
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイのキルケーの魔女
ギギ・アンダルシアの役割
閃光のハサウェイという作品においてギギ・アンダルシアというキャラクターはどのような役割をもっているのか、それは1作目を見ていたころからずっと疑問に思っていたことでした。
1作目から、非常に魅力的な女性で、周囲の男たちをいいように惑わし続ける彼女、キルケーの魔女では、裏で虐殺が描かれる中でひたすら彼女の周りの世界だけはキラキラと輝き続けている。どうにも、そんな彼女が画面に写り込むたびに、その存在が本作の中で異物のように思えてしょうがなかったのですが、最後まで見てみると彼女もまた自分のあり方に縛られた存在であったのではないかと思えてくる。
特にキルケーの魔女内での彼女の描写は、キラキラとした今の生き方に焦点が当てられていたように思えましたが、それもまた、彼女がそのすべてを捨てる覚悟で、自らの自由を選びとり、その結果、ハサウェイの元へ導かれるというお話のギャップを描くためだったのかもしれません。
そのあたりを中心に考えてみると、キルケーの魔女という作品は、ギギが自らの道を自分でつかみ取り、ハサウェイの元へ向かうまでの物語といった感じ。
今回の彼女、特に印象的だったのは、ギギが、彼女の後ろ支えとなっているバウンデンウッデン伯爵に対して本気で強い想いを持っていたという点。バウンデンウッデン伯爵は、周りのしがらみにとらわれる中、唯一本心をさらけ出せる相手がギギだったことが描かれ、そんな彼の自らの立場故のしがらみに囚われながら必死にもがいている姿は、どこか本編のハサウェイと重なる部分もある。ギギの気持ちがケネスではなく、ハサウェイの方に向く理由も、彼にハサウェイを重ねていが故なのかもしれません。
そんなギギですが、自らの直感に導かれ、エアーズロックの麓でハサウェイと劇的な再会を迎えることになる。まさに限界を迎えつつあった彼が、レーンを殺す寸前、手を止めるきっかけとなったのは、非常に意味深なシーンでした。
それまでの人生のしがらみから自らを解き放ち、自分の道を進み始めた彼女、ハサウェイとの再会は彼の今後を変えるきっかけとなるのかもしれません。
人間らしさを削り捨てるハサウェイ
キルケーの魔女でのハサウェイ側で見てみると、ただでさえ限界を迎えつつあった彼が、残っていた人間らしさすらも、どんどんと捨てていきマフティーそのものになっていくかのようでした。
そんな人間らしさを捨てていくハサウェイを象徴するような出来事だったのは、付き合っていたケリアとの明確な破局とその別れ。
以前から彼女の紙は結構短いなと思っていましたが、今回その理由が明かされることになる。最初は、ハサウェイの反政府活動に絡む前から付き合っていた様子でしたが、段々とその思想にのめり込んでいくハサウェイとのギャップが見えてくるように思える。少しずつ髪を短くしてく姿が非常に印象的でした。髪を切ることは、ハサウェイを止めることができない彼女なりの抗議だったのかもしれません。
そして、今回ケリアは、残った髪の毛全てを剃り落とす。それは、つまるところハサウェイとの関係の破局を意味しており、髪の毛に込められて描かれる彼女の想いがよく伝わってくる演出でした。
ケリアとの破局は、きっかけこそギギとの出会いではありましたが、そこに至るまでの経緯は確かにあったわけで、どちらにしても時間の問題だったようにも思えます。
それまで、ハサウェイのために食材を調達してくれていたケリア、ずっと自分に尽くしてくれていた彼女との別れ。失ってはじめて気づく大切さ、という言葉は少し安直ではありますが、まさに今回のハサウェイが感じただろうそのもの。そんな大切な彼女との別れは、ハサウェイに残された人間らしさがまた一つ捨てられ、よりマフティーという在り方に近づきつつあることを示していたようにも思えました。
そして、段々と限界を迎えつつあったハサウェイに訪れた最大に試練は、最後のレーンとの戦い。ペネロペ―の訓練機として追加の装備を多数取り付けられたνガンダムを相手にする中で、彼自身のトラウマと強制的に向き合わされることになる。
逆襲のシャアでの戦いの中、失ったクェスに縛られ、アムロという存在からは今の自分のあり方を否定される。このあたりのシーンは、ニュータイプ的な描写にも見えましたが、今の心が乱れたハサウェイを見ていると、むしろマフティーであろうとする彼が内面に抑え込んでいる様々な考えが、アムロの姿をとって彼自身を苛んでいるようにも見えるもの。
混乱するハサウェイは、レーンが乗るνガンダムにとどめを刺そうとする。このシーンのレーンを殺すという選択を取るかは、ハサウェイがマフティーとしてすべてを捧げるかどうかの境界線になっていたようにも思える。ある意味で、ギギの言葉が、ハサウェイの最後の一線踏みとどまることに繋がったようにも思えました。
Ξ(クスィー)ガンダムの崩れた顔の装甲が剥がれ落ちその素顔が明らかになったシーンは、直前のギギとの再会の際に、ギギの言葉でフェイスガードを外したハサウェイの姿と重なって見えました。
このフェイスガードを外し、ギギに素顔をさらけ出したシーンはなかなか印象的で、表情が見えないマフティーとならんとする彼が、その素顔をさらけ出すことができた、ギギとの出会いにより過去のしがらみから解き放たれようとする一歩を踏み出したようにも思えました。
最終作どうなるのか?
自らの思う方向に進みだしたギギの言葉が届いたハサウェイ、マフティーではなく、ハサウェイとしての表情を再び取り戻し、少しだけ良い方向に話が進み始めたようにも見え終わったキルケーの魔女。
しかし、もはやハサウェイは革命に向けた道を進み始めてしまっており、そのために今回も仲間が犠牲になっていることを考えると、今更その歩みを止めてしまうなんてことはできないように思える。
更に今回、連邦政府側は、ハサウェイの父であるブライト・ノアに招集をかけており、彼はもはや退官直前、これから老後にどこに住もうか考える中での最後の戦いとなるようです。地球に行くついでに、ハサウェイとも顔を合わせてこようとするその姿は、この先の嫌な展開を予感させてくるもので、アデレードでの戦いは、この二人が対面するという地獄のような絵面になりそうです。
ハサウェイがこれまでにやってしまった事を考えると、この後幸せな終わりを迎えるということは難しそう。そうなると、本作は彼が過去のしがらみから解き放たれるまでの物語、ということになるのかもしれませんが、果たして最終作で何が描かれるのか楽しみであり、怖くもありますね。


コメント