2025年4月18日に公開、原作:青山剛昌 監督:重原克也 脚本:櫻井武晴、による映画『名探偵コナン 隻眼の残像』の感想・レビューです。ネタバレも含みますので注意してください。
名探偵コナン 隻眼の残像
シリアス多めな作品
昨年の100万ドルの五稜郭は、どちらかというと軽いノリでぶっ飛んだ映画といった感じでしたが、今年は序盤から重い展開が続き、かつての相棒の死という事件に対しておっちゃんも本気で事件に取り組んでいる様子がうかがえる。序盤の方で探偵団や園子が絡んだ軽いノリは済ませ、終始シリアスな話運びとなっているのが印象的な映画でした。
おっちゃんの元相棒である鮫谷の死から始まった今回の事件、犯人とのチェイスの果てに大きく映りつつもはっきりとは描かれなかった警察署の姿が映し出された際には、何かあるなと匂わせる。そして、終盤には今回の事件の大きなヒントとしてしっかり拾われているのもよかったです。
探偵団の中では元太と光彦の二人は、真面目に危険な状況に直面、蘭姉ちゃんすら危ない状況を機転で救うという活躍を見せていたのがなかなか印象的で、今回の映画の方向性を決定付けていたようにも思えました。銃声が聞こえて外に向かうというパートは、子供らしい無謀さも感じさせる展開ながらも、内心は恐怖に震えながらもできることをやり切った結果窮地を乗り切り、短いシーンながらもしっかりした活躍でした。
全体の話のテンポはなかなか速く、中盤からは大きな出来事が次々と展開、気づくと最後の推理パートに突入している感じでなかなか見ごたえはあり。個人的には、中盤まで大和警部達に絡んだ過去の事件と、公安が絡んだ事件の関連性がいまいちつかめず、その規模の違いに違和感を覚えていたのですが、犯人の過去に絡めてその二つの事件をまとめる展開、そして、ラストのアクションパートできちんと盛り上げた決着となっており楽しめた作品でした。
便利に使われる公安
安室さんと風見に関しては、今回登場こそすれどどちらかというとコナン君に便利に使われているポジションという感じでした。
風見的には、コナン君を便利に利用しようとして接触したのでしょうが、盗聴器はあっという間に見抜かれ、むしろいつでも便利に使える連絡手段となってしまう。さらに、今回の一連の事件に関して必要な情報を度々要求されており、風見側から仕掛けたが故に仕方ないとはいえ、あまりに便利に使われていて思わず笑ってしまいました。
ちょっと余談ですが、犯人の林さん事件現場ですごい勢いでスケボーで追いかけ攻撃してきた子供に、盗聴器を付けろと指示された際には、どんな気分だったのか少し気になってしまいます。
長野県警組
大和警部を筆頭とした、長野県警組が一つの軸として描かれた今回の話。犯人であった林との交流でも、死んでしまった人に対するやりきれない思いという部分が、長野県警組の過去と今に重ねるように描かれており、そこに向きあう警察としての姿の違いが大きな意味を持つ作品となっていました。
コウメイのピンチに見た景光の姿は、あくまでコウメイの死に際に見た幻覚。生きていてほしいという思いが、死の間際にそんな姿を見せるのと同時に、景光の死を受け入れたことを暗に描写したのかなという気もするエピソードでした。
ラストでは上原さんから大和警部に対して、意味深なアピール。何となくこの方面には鈍そうな気もする大和警部ですが、流石にこの意味は理解していたようで、次に本編で登場する際の二人の関係が気になる終わりでした。
おっちゃんの活躍
今回、おっちゃんの事を知らない面々に対して、眠りの小五郎といった感じの紹介がなかったのも、最近本編でもわざわざ眠らせる展開が少なくなっているとはいえ、今回の眠らない小五郎ということを意識していたが故なのかもしれません。
そんなおっちゃんの活躍については、銃の腕はばっちりピックアップされており、山場では毎度おっちゃんの活躍が見られなかなか満足できる展開。お前がやったことにしておけよ、というくだりは格好よかったです。そして、事件の推理の方面は思ったほどの活躍はないなと中盤まで思っていましたが、相棒の名前に絡んで早々に犯人にあたりはつけていたりと鋭さを見せてきており、本作では眠らない小五郎の名の通りの活躍を見せていました。
個人的に良かったと思うのは、他の面々がコナン君を信頼して事件解決に協力させようとする中、明確にコナンを子供として扱い、事件から遠ざけようとする姿勢が一貫していたところ。最後吹っ飛んだコナンをキャッチするシーンなんかもよかったですね。
犯人について
今回の事件の犯人である林、彼女が自殺したにもかかわらず、その罪を許す証人保護プログラムの実施を許すことができず、機密情報を収集し国を脅迫するというなかなか大きな事件を起こす。
個人的に話を追っている最中は、国に対する脅迫という大きな事件と、非常に個人的な動機の二つが頭の中で結びつかず、最後の最後この二つが重なる展開には驚かされました。
元太に噛みつかれ、傷がついたことで明らかな証拠品となってしまった手袋。ちらっと映った過去回想では、この手袋がなくなった彼女からもらったものだということが描かれており、明確に言葉にはされませんでしたが、暗に手袋を処分しなかった理由が推測できるのがなかなか良い塩梅でした。
アクションパート
今回のコナン君、ラストのアクションパートでは序盤でスケボーが壊れてしまい、博士に修理を頼む余裕もなかったからか、勢いのままに鉄板スノボーで車に追いかけるというすごいシチュエーションが発生していてちょっと笑ってしまいました。
展望台本体こそ爆破されなかったものの、次々と爆破される展望台関連の施設だったり車だったりと、なかなか派手に大暴れといった感じで見ごたえがあってよい。
展望台のレーザービームを使い犯人を追い詰めるパートは、ちょっと無理がないかな?と思わないでもないですが、コナンとおっちゃん、二人で一度は逃がした犯人を追い詰める流れがなかなか良かったです。
来年は神奈川県警?
ラストに行われる毎年恒例の来年の映画の予告、トンネルの映像の中、蘭姉ちゃんのナレーションが中心となる。風の女神に絡み、萩原千速や神奈川県警に絡むエピソードとなりそうです。
ただ、舞い降りた白い羽や、女海賊といった単語も出てきており、果たしてどのようなエピソードとなるのか気になるところですが、映像のトンネルや交通機動隊に絡むお話となりそうですし、カーチェイス多めな作品となりそうです。
コメント