2025年7月25日に上映された劇場版映画『仮面ライダーガヴ お菓子の家の侵略者』の感想記事です。この記事には映画のネタバレが含まれますので未視聴の方はご注意ください。
仮面ライダーガヴ お菓子の家の侵略者
ショウマにとっての理想の世界
今回の劇場版のお話は、ショウマが自分たちの世界とよく似たもう一つの世界に行ってしまうというのが大きな話の筋。その世界には、自分たちと同じような存在がいて、しかし、皆それぞれ本編ではつかめなかった幸せをつかんでいるというのが本作の切ないところ。
大きな違いは闇菓子の有無。闇菓子が生まれたせいで生じた悲劇が起きず、ショウマの母であるみちるさんは、グラニュートに攫われず、絆斗の母や、ラキアの弟であるコメルも生きている。そして、ストマック家の面々もまた、人間を材料とする闇菓子が存在しないことで、人間界への偏見が小さくなっており、デンテ叔父さんがしていたように、人間界の食べ物に魅力を感じ、それを如何に自分たちの本業であるお菓子に活かすことができるかを考えているようでした。
また、ストマック家の関係も本編よりもかなり仲良く見えました。闇菓子があったからこそグラニュート界を支配するという目標があったわけで、ある意味その大きすぎる目標が、家族全体の仲にも悪影響を与えていたのかもしれません。特に本編でも本質的には家族が大事なだけだったグロッタは、お菓子向けのアイデア探しと言いながらも、食べているのはお菓子とは関係ない物ばかりだったり、下の双子二人とは綺麗な連携をしていたりと、だいぶエンジョイしているように見えて微笑ましかったですね。
怒るショウマ
今回の映画の敵となったカリエスたちは、世界を滅ぼすことを目的とした生命体というもはや存在自体が相いれない生き物。やっていることも、偶然ショウマの力を見かけ、それを望んだが故に人間とグラニュートを掛け合わせた実験体を大量に作り、そこに生じたガヴを奪い取るという非道な行いでまさに倒すしかない存在といった感じ。
ミューターという名称も、おそらく虫歯菌であるミュータンス菌からとったもの。歯をモチーフにした変身や、全てを溶かす特性あたりも、虫歯を意識しているようです。
そして、そんなカリエスを相手に、ショウマにとってはもう一人の自分といってもよいだろうタオリンまでも犠牲になってしまう。理想の世界をただ壊したいから壊すという、これまでショウマが戦ってきたグラニュート達とは全く異なる考え方を持つ敵に対して、今回のショウマの声はいつもよりも厳しさを感じさせるものだったように感じました。
しかし、そんなカリエス相手でさえも、最後にはその行いをやめるか、ここで俺に倒されるかといういつもの問いかけを行うショウマ。当然それに対する答えはNoでしたが、そんな相手ですら問いかけを行うあたりにショウマの性格が出ているように思えました。
タオリンはなぜパティスリーひだまりを覚えていたのか?
タオリンは、パティスリーひだまりのマークに見覚えがある描写がありましたが、なぜひだまりの記憶があったのか?というのは最後まで見ていてもいまいち理由がはっきりとわかりませんでした。
映画のラストでは、襲われたみちるさんの姿が描かれ、タオリンがみちるさんの遺伝子から作られた存在であることは示唆される。それゆえに、あの世界におけるショウマとしての存在であるということまでは推測できましたが、あくまでその時は実験体を作るための遺伝子情報を集められただけ。その時にまだタオリンは存在しないはずですし、逃げ出して記憶を失うまで、みちるさんと接触する機会があったというわけではなさそう。では、なぜタオリンはパティスリーひだまりの記憶があったのか?というのは少し疑問として残る。
ただ、このあたりは、タオリンがショウマの母みちるさんの情報から作られたから、という事なのか。はたまた、あのパティスリーの記憶を恐れていたことを考えると、自分たちが育ったお菓子の城の事を思い出し恐怖していたなんてこともあるのかも。
ただ、やはりどうにもはっきりとした答えは出てこず、このあたりは何かの機会で補足されることもあるのかなという気もしました。
タオリンと言えば、彼はゴチゾウを生み出すことはできても、そのゴチゾウを使って変身することはできなかった様子。最終的にベルトが変化したことで、グラニュートのような姿になってこそいたものの、その力は仮面ライダーとは比べることもできないぐらい低いものだったように思えます。このあたりは、やはり父が施したガヴへの改造の有無が大きかったのかも。ショウマが仮面ライダーとして戦えているのは、やはりガヴの改造があったからだったのだと感じさせるお話でもありました。
ショウマの幸せはどうなるのか?
パラレルワールドのストマック家とショウマは特に関係のない存在。大きく絡むこともなく、あくまでその場で同じ目的で居合わせたが故に同じ方向を向けただけという流れ。ショウマが自分をパラレル世界の弟だと伝えるような展開や、兄弟たちと共に戦う展開もあるのかなと思っていましたが、そういったものは一切なし。
パラレル世界のストマック家からすれば、あくまでたまたま同じ敵と戦う故に手を貸す形になっただけ、ショウマに対しては兄弟としての想いを向けるといった展開もなく。ショウマとの関係をあえてピックアップしなかったようにも思える。本来のショウマの世界では、もはや敵として戦うしかないストマック家の面々、それでも、ショウマからすれば、本当は仲良くしたかった兄弟たちです。例え別人であっても兄とそっくりな誰かが自分の背中を支えてくれたというのはどれほどうれしかっただろうと感じられる流れでした。
しかし、そんなショウマの理想の世界では、その世界でのショウマであるはずの、タオリンが最後に消えてしまうとうのがなかなか切ないお話。あの二つの世界を分けているのは、おそらく闇菓子が作られたかどうかという一点。あの世界のショウマとも言えるタオリンが消えたのは、闇菓子が生まれたからこそ生まれたショウマという存在は、ショウマの理想の世界には存在できないという事を暗に示しているようにも思えました。
そんな中、本編はいよいよクライマックスを迎える仮面ライダーガヴ、果たしてショウマは元の世界でどんな幸せをつかみ取るのか、今後の展開が楽しみです。
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