Turkey!
2025年夏より放送開始。監督:工藤 進、脚本:蛭田直美、キャラクターデザイン・総作画監督:武川愛里によるボウリング×タイムスリップのオリジナルアニメ、Turkey! の最終回 12話『さよならのTurkey!』の感想文となります。
アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方はご注意してください。
さよならのTurkey!
最後のスネークアイ
前回ラストの景時様御乱心かと思える展開。しかし、ピンに対応するように磔にされた面々は、倒しただけ助けてやるというもので、ある意味では前のルールよりも犠牲者が少なくなるという優しさ。とはいえ、あのまま続けていれば問題なくストライクを取り続けられる実力者二人が残っているあの状況で、プレッシャーに弱い麻衣に対しでも失敗させようという悪あがきとでもいえるようなものだったようです。
ただ、実際に失敗してしまったのは腕に怪我をしてしまっていた利奈の方でした。ただ、それでも麻衣がその状況からスペアを取る、ボウリングには二投目があると景時に直談判することでボウリングは継続。
この時点では、このまま終わらせれば景時の勝ちなのに一体何を考えて継続を許可したのか?と少し思ってしまう部分もありました。ただ、色々考えてみるとこの点に関しては以前の話で推測されていた武将としての誇り故の行動だったのかもと頭に浮かぶ。
つまるところ、このまま何もせず利奈の失敗で二人死んでしました、で終わってもいいところを、困難な状況に自ら挑み失敗した場合は責を共に負うという麻衣の気持ちを武将として感銘を受けたが故のボウリング継続の許可。また、このスネークアイという明らかに片方しか取れないだろう状況、景時的には既に2本の内1本しか倒せないろうと確信する中で、どちらか一人を助け一人を選んだ責任を負うという予想をしており、命を選ぶ覚悟に心打たれていたなんてこともあるのかも。
しかし、麻衣はそんな倒すのが不可能と思われたスネークアイを見事に両方倒し景時の予想すらも覆した、だからこそ、最後坊主が諦めずに次の趣向と進めようとした中でも、勝負に負けたと潔く諦めることに繋がったのかもしれません。
結局のところ景時が何を考えていたのかは、最後まで語られておらず、ただの妄想ではありますが、やはり彼なりに心打たれるものがあったが故に諦めたのではないでしょうか。
また、この最後にスネークアイを持ってきて、二つから一つを選ぶという流れは、1話での再現でもあり麻衣が抱えていた大きな問題を最後に解決するためのもの。
麻衣のトラウマの本質はピンを倒しきった後に喜んでくれる家族がもういないから、それが怖くて失敗してしまうのではないか?と寿桃が語りかけていましたが、この理由は自分が考えていた以上に深く非常にしっくりくるものでした。これまでのお話で再確認した仲間との絆こそが、最後にトラウマを乗り越えるきっかけとなったというのは、本作の最後にふさわしい流れだったと思います。
現代に帰って
そんな景時様との勝負は前半と少しで終わり、現代に戻った麻衣たちのエピローグにしっかりと尺を使ってくれていたのもよい感じ。
七瀬の父親との再会、さらに利奈の家族との件も少しずつとはいえきちんと前に進んだことが語られる。しいていうなら、さゆりの家を継ぐか麻衣について東京に行くか悩んでいたという問題が、これまでほぼ言及がなかったため、ちょっと唐突感があったかなというぐらい。
利奈に関しては、一人残るのが寂しいという状況の解決に、全国優勝して強豪校にして人を集めようという麻衣の答えは相変わらずちょっとずれていて微笑ましい。
そこからさらに時間は過ぎて、あっさりと全国優勝を成し遂げていたりもしましたが、そもそも利奈と麻衣に関しては元から相当な実力者でしたし、そこに戦国時代命がけのボウリングからのプレッシャーを乗り越えたとあれば、学生の全国大会も恐れるに足らずとなっていてもおかしくはなさそうです。
寿桃とハルちゃん
本作の最後に明かされたのは、1話駅にて麻衣が泣いていた手紙に関する謎。元の時代に戻る前に寿桃にボールを渡していた麻衣でしたが、寿桃もまた時代を飛んで未来に行ってしまったとのこと。
そこで記憶まで失ってしまった寿桃が、ある意味縛られていた過去から解き放たれて自由になる。そして、その果てで幼い頃の麻衣と再会したが故に、麻衣を引き受ける流れとなっていたようです。以前のOP冒頭で現代にいた寿桃、頭にけがをした包帯なんかもこの記憶喪失を意味していた様子。
寿桃とハルちゃんの声が同じな事には気づいていたので、何かあるのかなとは思っていましたが、思っていた以上にストレートに最後に回収するラスト。過去の世界で何の因果か寿桃を助けた麻衣、それが巡り巡って最後自分自身を助けることに繋がっていたというのもなかなか良い展開でした。
Turkey! 全体の感想
正直11話の展開は悪ノリしすぎてちょっとどうなるのかなと心配していましたが、最後にはここまでの伏線なども丁寧に拾いきって綺麗にまとめ、気持ちよく見終えられる作品でした。
そんな本作のメインであるタイムスリップとボウリングという要素に関しては、どうにもトンチキな絵面になる事が多かったり、結局タイムスリップとボウリングの関係は?という点を考えると意味がわからなかったり、結構力技で混ぜ合わせたなと思うところはあり。ただ、スネークアイを麻衣の心情につなげたり、二投目があるという言葉を最後まで生かしきっていたりと、しっかり本編に絡めており必要ではあったものでした。
本筋のタイムスリップ要素、キャラの心情の描写などを丁寧に作り、そんな中に放り込まれた雑味とでもいえる要素が本作の中でのボウリング。とはいえ、全体で見ればボウリングに絡めたが故の物語でもあり、やはり、ボウリングがあるからこそのTurkey!というのは間違いなさそうです。
時折見ていて不安になる事も多かったですが、なんだかんだ最後まで見ると記憶に残る結構好きな作品になりました。
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