世にも奇妙な物語 35周年SP 秋の特別編
2025年11月8日に放送された世にも奇妙な物語 35周年SP 秋の特別編 の中の『七階闘争』の感想記事です。ネタバレも含むのでご注意ください。
七階闘争
森崎と並川
マンションの7階に住む森崎は、突然市役所の人間が訪れ7階を排除するという政府の決定を聞かされる。そんな中、彼が恋する並川さんとの交流を経て森崎は七階闘争へと巻き込まれていく…というお話。
7階に異常な執着を持つ人々が登場したり、7階の犯罪率が高いから排除するという政府の決定など、何やらぶっ飛んだ設定が並び一見するとバカみたいな話なのですが、7階を爆破してなくすという政府案を見た瞬間にもはや細かいことはどうでもよくなってくるのが面白い。また、絵の雰囲気なんかも暖色系の色味で統一された独特のビジュアルになっており、お話のシリアスさを引き立てるのに一役買っていたように思えます。
そんな本作、全編を通じて7階に絡んだふざけたかのような展開が続くのですが、こと序盤は森崎の驚きのリアクションが挟まることで、するすると7階を排除しようとする政府と、それに対抗しようとする7階闘争のお話に浸っていくことができたように思えます。
序盤の森崎の行動原理は、並川さんに気に入られたいが故に話を合わせていたというもの。これに関しては、話が進み闘争に飲み込まれる中でも、それを第一としていた様子。しかし、果たしてどこまで彼が最後までその普通の完成を保てるのか、7階闘争に飲み込まれてしまうのかと、先の展開が気になるお話でした。
集会では、何やら7階に関するうんちくが繰り広げられ、ファンタジーのような七階の起源にまつわるお話が聞かされる。このあたりから、段々と森崎も7階の魅力に取りつかれ、最後には7階の刷り込みという現実を実際に目の当たりにたことで、彼もまた7階の魅力に取りつかれてしまう。
しかし、そんな森崎も最後には7階から10階に移り住むことを決めたあたり、やはり心の奥底、命まで捧げる覚悟は持てていなかったようです。そして、それに対して並川は、生まれも育ちも7階の生粋の7階闘争者。最後まで命を捧げる覚悟で向き合っていた彼女との別れのシーンは、前提が7階というわけのわからない話でありながらも、なかなかジーンと来るものでした。
結果、七階闘争は意味がなく、全ての7階は排除され、森崎は一人並川を思って終わり…なのかと思いきや、そこからお話はもう少しだけ続く。そして、このもう少しだけ続いた部分こそある意味本作が伝えたかったものなのかなと思わせるものでした。
レッテル 無責任 そして争い
今回の話、一番印象に残ったのは終盤テレビで流れた「7階の犯罪率は0%ということは、7階が安全ってことじゃないですか」という市民の発言でした。7階を撤去したのだから、当然7階の犯罪率は0%になる、それは当たり前の事なのにそれを理解せずにそれが必要だったと今更いう声は、何ともその発言の無責任さを感じさせてくる。
この7階に関する話は、このあくまで物語として誇張されたものなのでしょうが、果たして自分たちがデータというものを示された時に、その本質まできちんと捉えることができているのだろうか?と思わせるものでした。
7階に対するレッテルを貼り排除し、それが終わってみれば、今度は必要だったのではないか?とあっさりと手の平を返す。7階を消した後のマンションは銃声が鳴り響くより危険地帯と化していましたが、それもまた7階を消すことで、それに対して反抗する意思を持つ人々を生んでしまったが故なのではないか?と思わせるもの。
冗談みたいな展開、冗談みたいな話運び、冗談みたいな7階にまつわるお話ながらも、その裏には情報に惑わされることの怖さ、そして、自分で考えることの大切さ描いているようにも思えるお話でした。
そんなこのお話、ちょっと調べてみた所2012年に発売された三崎 亜記の小説集『廃墟建築士』の中の1つとのこと単行本の他電子書籍でも販売されているようです。全4編のお話が収録とのことで、別のお話も気になりますね。


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