永久のユウグレ
2025年秋より放送開始。監督・シリーズ構成:津田尚克、キャラクターデザイン:齊藤佳子によるP.A.WORKSオリジナルの本格ラブストーリーアニメ、永久のユウグレ の9話『昔日の彼方を向いて』の感想文となります。
アニメのネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方はご注意してください。
昔日の彼方を向いて
夫婦のお話
先週から続いた夫婦のお話、奥さん側の気持ちを最後の最後まで表に出さなかった故に、どうこの話が落ち着くのかと冷や冷やしながら見ていましたが、最後は夫婦の別れで決着。特に自分たちの作戦で復縁が成功したと思っていた、その楽観的なところがどこか父親に似ている娘さんの悲しみ具合が本当につらい。この夫婦の関係は、最後にこう決着するしかなかったというのはよくわかるのですが、それに巻き込まれてしまう子供たちの反応はやはりしんどいです。
最後には別れることになった二人ですが、妻からしても旦那からの愛は分かっているし、未だに自分がオレンジを好きだと感が違いし続けているのもきっと未だも愛している。しかし、それほど愛しているが故に自分に対する裏切りを許せないという感情を抑えきることもできない、というのがよく伝わってくるお話。ここまでひたすらに表情が死んでいた理由が伝わり、最後のこれまで聞いたことがないほどの大きな声での話というのが、彼女がどれほど思いを込めて別れ話を切り出したのがか伝わってくるようでした。
アキラ達に繋がるお話
また、この夫婦の別れのお話は、アキラ・ユウグレ・アモルの今後の展開を示唆するものになっていたというのもこの1話の中の話のまとまりに繋がっていてよかったです。
アモルは、アキラとユウグレが意識しあっていることを薄々と感じ始め疎外感を感じており、二人が自分に対して隠し事をしているという面で旦那に裏切られた寂しさを感じる奥さんと重なる部分が見せてくる。しかし、今回の話はそれだけではなく、アキラとユウグレ、二人の物語の核心の部分でも、ユウグレが隠していたアキラがアンドロイドだったという事実が明らかになることで、二人の間の隠し事が、その関係に与える影響をより強く感じさせる役割を果たしていたように思えます。
なまじ、アキラもアモルの絵に描かれた自分の表情を知ったことで、ユウグレを明確に意識していることを理解し、二人との関係を考えなければと思い直したタイミング。そこで明かされたユウグレの隠し事は、まさに自分自身のアイデンティティに関わるものでもあり、あそこまで失意に暮れてしまうのもわかる。
ただ、このアキラの真実、ユウグレが話した通りどのタイミングで話すべきなのかと言われると、非常に難しい話。最初に話して、素直に受け入れてもらえるのか、いつ話すのがベストなのかと言われれば正しい答えがあったとは言えず、それが今回、なまじ関係が深まってしまったが故に、最悪のタイミングで明かされることになってしまったようです。
過去に何があったのか?
今回、1話以降登場していたアキラがアンドロイドであることが明らかになりました。1話で声の自動翻訳のような演出が入っていた当たりから怪しい部分はありましたが、今回アキラが自らをアンドロイドだと自覚したあたりから、これまで見てきた文字までも自動で翻訳されたものであったことが判明する。
アキラからすれば、自分にはアキラとしての記憶があるのに、体はアンドロイドと言われ、リミッターの解除で力を発揮し、傷ついたその体は機械のものでもはやそれが嘘であると言える条件はどこにもなく、どう対応すればいいのかわからないというのも仕方ない物。
更には、それまで側にいて信じ始めていたユウグレが、自分にそれを隠していたという事実が追い打ちとなり、もはや現実を見ていることもつらくなり考えるのをやめて眠りについてしまったようでした。
そんなアキラに対して、ユウグレは意識を繋げて話しかけてくるのですが、これができるということもアキラがアンドロイドであるが故。そんな夕暮れですが、いよいよアキラの過去に何があったのかを明かす形で次回に繋がるようです。
次回予告では、0話の後に何があったのか、AI戦争とは何だったのかという部分がいよいよ明かされることになりそう。気になるのは、トワサの側にアキラの姿がある事。ただ、今回アキラがアンドロイドだったということを考えると、本当のアキラは死亡、記憶を移したアンドロイドが予告に映っているアキラということなのかも。今のアキラの体にトワサを庇った際の傷がついているのも、怪我は治ったものと思わせるためにあえてつけたと考えれば一応筋は通りそう。
そんなアンドロイドとして作られたアキラはそのことを知らずにトワサと生活を続けるも、やがて自らの真実を知ったが故に今のアキラと同じようにおかしくなってしまう。トワサの罪というのは、アキラをアンドロイドで蘇らせ、苦しめてしまったというものだとするなら、そんなアキラの記憶を消して未来の世界で別人として生きてほしいというのがトワサの願いととも考えられそう。そんなもう一人のアキラの幸せを願ってユウグレに今のアキラの事を託していたなんてことはあるのかもしれません。
今の世界はどうなっているのか?
アキラとトワサに何があったのかは次回明かされそうですが、それだけではなくAI戦争で何が起きたのかという点も明らかになりそうです。
予告では、周囲の人を襲い始める人間の姿がちらっと映っていたりと、戦争の始まりとなりそうな部分がちらっと映っている。ユウグレ達は、この戦争を止めるために作られたことも明らかになっていますし、次回では他の姉妹たちの姿が描かれるなんてこともありそうです。
ひとまず彼女たちの活躍で戦争は終わり、OWELによる管理社会に移ったという点まではぼんやりとわかっていますが、半分消えた日本以外の国はどうなったのか、そもそもなぜ日本に外国人が定住することになったのか、というあたりはまだまだ謎。戦争による難民が日本に住むことになったというなら、もう日本以外の人の住む場所は存在しないなんてことまでありそうに思えます。そうであるなら今の管理社会と禁書での技術の秘匿も、今の日本を維持するためにはそのレベルに抑えなければ資源が足りないなんてこともあるのかもしれません。
また、アモルがユウグレに治療を受けていた件や、今回のヨクラータがメンテナンスが必要という話を考えるに、生きている人間もただの人間というわけではなさそう。彼らもすべてアンドロイドなのか、はたまた、LC計画で語られたAIと一体となった人間なのかというあたりも次回明かされそうです。ただ、これまで登場した人間たちは子供を残していることや、アモルの絵本に語られた内容から考えると、AIと人間が一体化した存在という方がありそうな気はします。
OWELのアンドロイドにより管理されるAI交じりの人間による社会が、今の世界なんてこともあるのかもしれません。そういえば、以前の管理官がユウグレに吹っ飛ばされても、生きていたりと妙に頑丈だったのもアキラと同じようなアンドロイドだったからなんてこともありそうですが、果たしてどうなるのでしょうか。
とはいえ、本作は世界がどうであろうと、結局のところユウグレとアキラの関係がどうなるのか、という点こそが重要であるように思える。次回、世界の謎は明らかになりそうですが、それを知ったうえで三人の関係がどうなっていくのか、気になるところです。


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