2022年10月2日より放送開始した機動戦士ガンダム水星の魔女。分割2クールの放送を終え、2023年7月2日に最終回「目一杯の祝福を君に」により完結となりましたので、作品全体を通じての感想。内容的にネタバレありなので未試聴の方は注意してください。
令和のガンダム
水星の魔女というタイトルがまずかなりキャッチーだったなと思いました。あえてガンダムであることをメインに押さずに、水星の魔女というタイトルをメインに推すことで新しいガンダムっぽさが感じました。
エアリアルも、どこか女性的なシルエットを持った機体、女性主人公である『スレッタ・マーキュリー』の印象も含めて非常に面白かった。
また、スレッタと、ミオリネ、互いに女性同士の恋愛というものをメインに扱っていたのも今の時代の作品なのだなという気がします。
1期の学園パートについては、所謂学園物のシナリオらしい展開で、その中で人間関係を構築していくスレッタの話が明るく、あまりこれまでのガンダムでは感じたことのない空気感でした。どちらかというとビルドシリーズに近い空気を感じました。
そこから転じて2クール目では次々ハードな展開が襲うのは、1クール目は餌にして釣っていたんだな、と少し笑ってしまいました。意味1期ラストの衝撃のエアリアルパンチは、2クール目から本気出すよというアピールだったのかもしれません。
それでも2クール目最後は結構優しく終わりました。特に割とやりたい放題だったペイル社の4CEOが生き残ったのはかなり意外。
個人的には強化人士5号が結構お気に入り。あの流れから復讐に身を投じるのではなく、生きること、やりたいことを優先した彼は結構ガンダムだと珍しいキャラクターな気がします。結局顔はエランのままですが、エラン(本人)は気にしないのかな?とも思いましたが、あまり気にしなさそうですね。
プロローグから仕掛けていたトリック
本編放送前にネットなどで公開された水星の魔女のプロローグ。プロスペラとその娘『エリクト・サマヤ』を巻き込んで起きた事件について語られるお話。
本編では、冒頭スレッタが、エリクトなのだとあえて誤認させ、徐々に年代などを示すことで何かがおかしいと気づかせていく話づくりは面白かったです。
どことなく感じた違和感がはまっていく感じは、リアルタイムでないと毎週考えながら進むのが楽しく良かったと思います。
2クールである故の良さ、もったいなさ
2クールであるが故の、テンポの早さは魅力でありもったいなくもありました。
何か落ち込む展開があっても、あまりもやもやすることなく早々に解決につながるので、気軽に見れる作品でした。しかし、それと同時にどこかあっさりさも感じてしまう。長丁場でのアニメをたびたび見ていたからかもしれませんが、悩み・苦しみの部分が長々とあるからこそ解決したときの爽快感につながるのではないかなと少し思う気持ちもあり。
個人的には2クールであったがゆえに細かい部分まで語れなかったところ、もったいなかったところもあったなという気がしました。
学園パートだけなら行けたかもしれませんが、プロスペラの暗躍、それに対する議会連合からの襲撃、アーシアンとスペーシアンの対立、こういった部分には少し駆け足感を感じました。特に議会連合については、もう少し内情を見せてほしかったような気はする。
それ以外だと、ラウダが終盤のシュバルゼッテに乗り兄グエルと戦うあたりは、突拍子もない行動に出たようにも見えました。よりによって仕掛けたのがクワイエットゼロのタイミングというのは、今そんなことしてる場合か?という気持ちもあり、もう少し長丁場なら丁寧にやれたのかなと思ってしまいました。
それでも、話のメインに当たるスレッタの部分については終盤丁寧に、家族やミオリネから遠ざけられたことによる挫折と、自分のやりたいことを見つけ直し立ち上がる部分を描けていたので良かったと思います。
動画も早送りで見られてしまう現代だと4クールという長丁場の作品をしっかり作るのは難しいのでしょうか。
水星をタイトルにつけた意味?
パーメットの採掘のため利用されていた水星。しかし、作中ではほとんど出番はなく、あくまでスレッタの育った地というだけでした。なんなら、現地の描写もほぼなく、本人的にもそこまで故郷というわけでもなかったのか。
宇宙でも水星という過酷な環境での生活をしているスペーシアンがいる中で、その不満や対立という点も触れたりするのかなと思っていましたが、結局、地上と宇宙との対立というガンダムだと定番の話に収束してしまったのはちょっと寂しいところでした。
ラストもスレッタがいたのは地上のシーンという事で、水星に学校を作るという最初の目標のは達せられたのかも謎(一応こっちにも学校を作るという話ぶり的に水星にも学校は作ったのかもしれません)。
折角これまでのシリーズにはない、水星というモチーフを選んだのに、その意味が薄かったかなという気がしました。
親と子
親と子供の関係に焦点を当てており、親が子供を思うところを素直に描いているのはガンダムでは結構珍しい気がしました。
実の親子でありながらそれを知らず殺し合い、それでも最後にはずっと心配していた気持ちを伝えることのできたジェターク親子。
血のつながった親子ではなくとも、お互いのことは思いあっていた。しかし、自身の目的のために親を踏み台にした、サリウス親子。
いつも反目しあいながらも、物語の中で互いを認めることとなった、レンブラン親子。
エリクトと、そのコピーであるスレッタ。特にスレッタについては、誰よりも親であるプロスペラに依存して生きていた彼女が、自らのやりたいことを見つけて歩き出す。
それぞれの、親からの自立を描いた作品でもあったのかなという気がします。
まとめ
評価:
2クールで描ききるには世界は広すぎ、問題は大きすぎ、SFロボットアニメの魅力はでかすぎ、といった感じでちぐはぐさもところどころ感じる作品でした。特に水星という題材をタイトルに入れたのに、そこまで重要なものではなかったのはもったいなかったなという気もします。
とはいえ、これまでなかった新しい時代のガンダムといった感じの作品で楽しめました。次のテレビシリーズのガンダムがどのような形式になるかはわかりませんが、楽しみにしたいと思います。
当ブログでは2クール目から感想記事を上げています。各話の感想は水星の魔女感想タグからどうぞ。
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