2024年秋に放送開始の作品、監督:上村 泰によるネガポジアングラー 8話『親子の関係、子供の成長』 の感想文となります。ネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方は注意してください。
8話『親子の関係、子供の成長』感想
店長と息子
今回のお話は、エブリマートの雇われ店長である町田さんとその息子に絡んだお話。
何やら冒頭、別れた妻についていった息子と久しぶりに会う事ができる、ということで悩む町田さん。鮎川さんがちょっと辛辣な話ぶりで店長に話していたのがちょっと気になりましたが、その後の店長との会話を聞いていると納得しかない。人に息子と何をすればいいのか聞く割に、何やらちょこちょこと文句をつけて、常宏の提案したハゼ釣りを一度否定してにもかかわらず、最後にはその意見にたどりついているは、流石に常宏が可愛そう。アイスさんも、いつもの緩い姿から、いつの間にかモデル体型になってしまうのもよくわかるワンシーンでした。
ハゼ釣り
そして、訪れるハゼ釣りの日。興味津々の鮎川に、ハゼを釣りたかった常宏、なぜか巻き込まれた躑躅森の三人が影から様子を見守る。
てっきり、息子である優君からもそこまで好かれていないのではないかと思わせる、二人の微妙な距離感。しかし、優君からすれば久しぶりにお父さんと一緒に遊びに行けることを楽しみにしていたことは、息子の父親に対する何気ない反応から少しずつ見えてくるのが丁寧な展開。
いざ、ハゼ釣りを始めると、楽し気にやっていたり、父親が釣りを楽しそうにやっている様子を知っていたりと、父に興味を持っていることがわかる優君。しかし、それに対してかつての思い出を忘れていたり、一緒にいられることが楽しい優君に何かを買って機嫌を取ろうとするといった、どう対応していいのかわからず失敗している父の姿が生々しく見える。
今回は、町田さんの良いところ、悪いところを、どちらも描いており、人というものの様々な面を描いているようで面白かったです。
幻のチヌ
そんな中、汽水域であるが故にチヌが釣れたという話が、子供たちから伝わる。まさに、それは幻の魚。そんな、奇跡のような魚を釣り上げることができたなら、父とまた一緒に暮らせるのではないかという願いをその釣りに託す。
釣れるかどうかもわからない魚、しかし、まさかの奇跡が起きチヌを釣り上げることに成功。しかし、優君はそのチヌを父に気付かれる前に逃がそうとする。親の関係がこんなもので治るわけがない、ただ父親を困らせる自分のわがままだと認めている優君。小学校3年生にしてはとても大人な彼ですが、やはり両親の関係を常に感じ取って考えていたからという事なのかもしれません。
ただ、諦める優君に対し、常宏の何気ない言葉が、救いになっていたというのはよい展開。今回は全体的にサブのキャラといった感じであった常宏でしたが、幻のチヌを釣った直後、太い糸に変えていたことに気付く。釣りたいから糸を変えたと、ある意味当たり前のことを何気なく話していましたが、その一言は、町田さんの息子からすれば、父親が自分と共にいたいと思ってくれていたという事を気付かせる発言となって聞こえており、少しだけ顔を明るくさせていたのはよいシーンでした。
チヌを釣りに行く、その意味は?
ラストは、そんなチヌを一緒に釣りに行こうと誰かを電話で誘う町田さんで終わる。母にやりなおそうと連絡をするわけでもなく、大きなチヌを釣りに行こうと友人を誘うことには、どのような意味を持たせたのかなかなか気になるラスト。
息子の優しさ、それはしっかりと理解し、それに答えてあげたいという気持ちもある。ただ、それに対してどうしようもない現実と気持ちの折り合いをつけるためには、あぁやってそこから釣りに逃げるしかなかったのか、はたまた本当に釣りたいだけだったのか。しみじみとしながらも、一貫して割り切れない人間らしさを感じるラストシーンでした。
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