2024年春に放送開始の作品、原作・企画・製作:東映アニメーション シリーズ構成:花田十輝 シリーズディレクター:酒井和男 オリジナルアニメ『ガールズバンドクライ』の1話『東京ワッショイ』の感想文となります。ネタバレとなる要素も含みますので未試聴の方は注意してください。
1話
東京の厳しい現実
主人公の熊本からの上京から始まる物語。初めての東京は、いきなり駅で迷子。スマホの電池も切れ、ようやく不動産屋についたものの、時間はすでに夜。連絡もつかなかった彼女は、行く先を失う。まさしく、田舎から東京へ来たことに対する洗礼を受ける彼女。
道を尋ねれば無視され、スーツケースを転がす音はうるせぇと怒鳴りつけられる。何とかアパートにたどり着くも鍵はなく家には入れず。地元なら鍵が隠してあるだろう場所を探すも、鍵は見つからず。むしろ、その様子を警戒されお隣さんがでてきてしまう。優しい声をかけてくれるも、その手にはゴルフクラブが握られており、むしろその優しさゆえか、逃げ出してしまう。
何とか充電できた電話にかかってくる家族からの心配の声、しかし、その家族の心配もまた仁菜からすると、煩わしく思えてしまう。そんな中、たまたま近くでライブをやると知った、憧れの人物桃香との出会い。シェアハウス、知らないことが多い世界。
桃香との会話の中で、楽勝じゃんという、言葉に対して仁菜が見せた態度。17歳、高校を中退して東京へと飛び出してくるという、なかなかはじけた行動をしながらも、その実どことなくやわらかい雰囲気を持っている仁菜の中にあるやりきれない思いのようなものがはっきりと感じられるシーンでした。
出ていこうとするものと、来るもの、たまたまであった二人により物語が始まるといった感じの良い1話でした。
中指を立てる
最初は桃香のライブの場所に、文句のために建てた中指。その意味を知らず仁菜は、ありがとうの気持ちとあっさり騙されてしまうあたり、割と育ちの良さもうかがえる。あまりにもあっさり騙され、案の定お店での感謝に中指立てていて少し笑ってしまう。
しかし、最初こそ、そんな風に中指立てるシーンは、ギャグシーンとして登場していましたが、話の流れの中でその意味が変わっていく。東京で音楽をやっていく、そこに見える厳しい現実。自分が憧れとしていた、桃香さんですら、旭川に帰るというやりようのない気持ち。
最後に桃香に貰ったギターに書かれた、中指立てていこうぜと言う言葉により、その中指を立てるという鼓動が、まさにそんなやりきれない何かに対して立ち向かう意思を表すものへと変わっていく。
そしてラスト、雨の町の中、他人の路上ライブのマイクを奪い取り、桃香に呼び掛け、それに答えた桃香さんの登場からのライブの流れは、地元である熊本を飛び出してからずっと彼女自身がもっていた、もやもや全てをあの瞬間にぶちまけているようでした。
そこから繋がるED、喧嘩をしていた男女ペアも巻き込んでの演奏はそこまでの流れもあり非常に良いシーンでした。
最近の音楽を題材にした『ぼっち・ザ・ロック』や『ラブライブ』などの作品とは、またちょっと毛色の違う作品ですが、彼女たちがどのように生きていくのか先が気になる1話となっていました。
フル3DCG
正直、フル3DCGでのアニメーションというのが、放送前、見るのをどうするか迷う要素でした。
何となく表情が硬いというか、動きが書くついているというかどことなく違和感を覚えてしまう作品が多く苦手に思っていました。しかし、本作では動いているところを見てみるとCGらしさを感じる部分こそあれ、違和感をあまり感じることなく動いていてすごかったです。
特に表情は、ぬるぬるぐりぐり動く感じで、非常にコミカル。ちょっと過剰気味にも見えるところもありましたが、そのあたりもまたキャラクターを表しているようでよかったです。
雑踏シーンなんかのモブキャラクターはちょっと安っぽい感じがして逆に目についてしまう気もしましたが、本筋、メインキャラクターたちが動いているシーンは非常に良い出来。フル3DCGでのアニメーションというと、時間を賭けれる映画なんかはよいものが多くなってきたここ数年、それでもまだテレビ放送だとまだまだ違和感も多いという印象がありましたが、本作ではとても良い動きが見られました。
3DCGでのテレビアニメーションに関する印象がちょっと変わりそうな作品となりそうです。
東京ワッショイ
1話タイトルの『東京ワッショイ』は、遠藤賢司による曲。仁菜が飛び込んだ東京を表すような、厳しいながらも、お祭り騒ぎのあふれる街を現したような曲です。
次回2話『夜行性の生き物3匹』
何やら女の子3人で並んでいる姿もあり、バンドメンバーとの合流回となりそう。桃香さんは果たしてどう動くのか気になるところです。
コメント