2024年9月4日配信開始、週刊少年サンデー2024年41号に連載された名探偵コナン新シリーズの4話 『薄墨色の前楽』の感想・考察記事です。ネタバレもあるので注意してください。
FILE1132「薄墨色の前楽」
今回は、これまでの殺人事件に関連する事実が明らかになり、次回の最後のエピソードに向けて事件を推理する要素がほぼ出そろったエピソードとなったようです。
今回はいろいろ情報も揃っているので、1件目楢沢さんの事件から改めて考えていきます。
1件目 楢沢さん転落死について
今回の話で、新たに1件目の楢沢さん落下死の事件でわかったのは、楢沢さんのスマホには庵坂さんが過去に正当防衛でおかした殺人事件の記事のスクショができてたという事。
こちらはおそらく、楢沢さんが、2件目の被害者垣脇さんから聞いていた楢沢さんに恋敵の弱点を教えたという話がまさにこの件なのかなという気がします。
さらに、事件発生時庵坂さんは母親と一緒に降り、事件現場の下にいたという事。この件は、庵坂さんの母がたまたまた楢沢さんの落下中の写真を撮っていることからも確定。3件目の事件の被害者である長窪さんがちらっと話していた先に現場にいたような?という話とも一致しているように思えます。
この写真を見てみると、楢沢さんは落下時には両腕がきれいに下がっているポーズをとっているとはいえず、事件直後に楢沢さんの側に庵坂さんが近づいていたという話を合わせて考えると、庵坂さんが咄嗟に死体にこのポーズを取らせたというのがありそうです。
このあたりの情報をまとめて考えてみると、楢沢さんの事件での庵坂さんの行動は犯人を庇うために動いているように思えます。そして、楢沢さんが庇おうとする人物という点から考えると、1件目の犯人は倉石さんという可能性が高そうです。
楢沢さんは、倉石さんの弱点である、過去の庵坂さんの事件の件を知り、この件を世間に公表されたくなければ彼から離れろと、恋敵である倉石さんを脅迫。倉石さんは、咄嗟に突き落としてしまったというのが顛末でしょうか?
そして、その事件をたまたま下で目撃してしまった庵坂さんは、倉石さんを庇うために死体のポーズを変更、更に上からスマホを持っていき傀儡の悪魔のメッセージを入力し下に落とし、後から現場に戻ってきたとするとつじつまが合いそうです。
ただ、この時点だと、倉石さんを庇おうという意思は分かりますが、なぜこんなめんどくさいメッセージを残したのかという点については謎のままです。
2件目 垣脇さんの転落死について
2件目、垣脇さんの転落死に関連して今回明らかになったのは、垣脇さんが演劇大賞を取った際の賞状と、更にその時の演技の音声が入ったタブレットがなくなっているという件。タブレットには、演劇での「ぎゃああ」という叫び声が入っているとのことです。
2件目の事件発生時には、庵坂さんは部屋の中で寝ており、倉石さんについても扉を開いたタイミングで事件が発生、さらに叫び声が下に落ちていき、何かが落ちたようなドサッという音まで聞こえたということで、そのタイミングに事件が発生、二人にはアリバイがあるという状況になっていました。
今回追加で明らかになった情報から考えると、垣脇さんはこの落下のやり取りの前に庵坂さんに殺されてしまっていたという可能性が高そうです。おそらくタブレットに含まれていた音声が2件目の事件のアリバイに絡んでおり、ちょうど扉を開くタイミングでタブレットを落下させつつ遠隔で録音されていた音声を再生したのではないでしょうか。
事件のページでは、庵坂さんの眠る部屋のベランダの扉が少し開いていることもあり、今回なくなった賞状の額縁の紐を使ってタブレットを吊るしておき、ベッドからタイミングを計って落下させたのでないかと考えられます。ただ、落下した際のドサッという音については果たしてタブレットだけでそれほどの音になるのかちょっと疑問が残ります。
最後に垣脇さんの死亡時の体のポーズについても、先に殺しておきポーズを仕込んでいたとするならば、ポーズを取らせることが可能だったと考えられます。
ただ、垣脇さんが殺された理由については、ちょっと謎が残ってしまう。想像してみるなら、庵坂さんの過去の事件を知っていた垣脇さんが、今回の倉石さんの殺人事件を知った事、もしくは庵坂さんによる偽装工作に気付いたことで、庵坂さんに脅しをかけたところを殺されてしまったというあたりがありそう泣きはします。
1件目の事件で残したメッセージが、2件目の事件で垣脇さんが脅迫しようとするきっかけになったとするなら、自分たちの過去を知る人物をあぶりだすために1件目のメッセージをあえて庵坂さんが残したといった事も考えられるのかもしれません。
3件目 長窪さんの転落死について
前回発生した長窪さんの落下事件に関しては、今回でかなり判断できる材料が出てきたように思えます。
前回何やら細工がしてありそうなテスリについては、液体ガリウムで溶かした痕跡があり誰かがもたれかかれば落ちるように仕込まれていたことが明らかに。
さらにこの事件発生時は、警察がそれぞれの被疑者に張り付いていましたが、ちょうど事件の際、庵坂さんについていた警察は風に舞った腕木通信の解読表を拾うため目を離していたとのことまでわかる。
今回の話では、屋上にいた倉石さん、下にいた庵坂さん、トイレにいた長窪さんの三人とも事件を起こせる可能性が描かれました。
まず、長窪さんはトイレからではタイミングを合わせることが不可能という事で除外。落下時のイメージ図でも頭から落下している姿が描かれ、犯人ではないことを示唆しているような気がします。
次に、倉石さんは屋上で声をあげることでテスリに背中を持たれ上を見させることで落下させることは可能。しかし、下での腕の細工ができないため除外。
最後に庵坂さんについては、ちょうど警察の目が離れており、かつ下で腕の細工が可能ということで、おそらく庵坂さんによる犯行であることが考えられます。近くにいた警察は彼が声を出していないことを確認していますが、上で何か起きてるといった感じで屋上に指をさすことで上を見るように誘導し、テスリに体をもたれかからせるといった事は可能ではないかと考えられます。
前回、煙草を口に加えることで、たばこを意識させ長窪さんにタバコを吸わせにベランダに行かせることも可能だったように思えます。
メッセージの意味 LIVEとLOVE
一連の事件はそれなりに説明できた気がしますが、最後に一番の謎となっているのは、手信号のポーズによるメッセージの意味。
犯人が庵坂さんという前提で話を進めますが、ラスト被疑者として既に確保されていた庵坂さんは、浪速ハルカスの屋上に向かったことが明らかになりました。これはおそらく、最後のメッセージであるLを残し自殺しようとしてたと思われます。
なぜこんな回りくどい事をしたのかという点については、メッセージを作ることで、この事件をメッセージを伝えるための物と考えさせ、最初の事件も自分が起こしたものと倉石さんから視線を逸らさせる狙いがあったのではないでしょうか。病気で体が弱っている庵坂さん、最後に自分の命を使って倉石さんを庇おうと行動を起こしたと考えられます。
ただ、それでもメッセージの意味については謎のまま。そこで今回明らかになった、「下手から傀儡の悪魔」という3つめのメッセージを合わせて考えてみます。探偵二人は下手を演劇の言葉から左側からではないか?と推測し、やはりEVILであると判断しました。ですが、おそらくこれはミスリードとなっており、この下手の意味は、単純に下から読むという意味が込められているのだと思います。
そう考えると、今回の一連のメッセージは、EVILを逆さから呼んだLIVEとなるのですが、これでも少し意味がわからない。そこで、更にこの犯人が告白の名所である浪速ハルカスを選んだ理由を考えると、そもそもこのメッセージは最初LOVEとするつもりで、倉石さんに庵坂さんが愛を伝えるメッセージだったのではないかと予想できます。
本来は命を懸けて愛を伝えるつもりだった庵坂さんですが、3件目の事件時、屋上での倉井さんの自殺騒動を目撃してしまい倉石さんが思った以上に憔悴していることを知る。そこで、庵坂さんは咄嗟にLOVEのOをIに切りかえ、LIVE(生きろ!)というメッセージに切り替えたのではないでしょうか。
ただ、このメッセージを残す場合、そもそも最初の楢沢さんの死亡を知った時点で、あと3人は殺さなければ成り立たないものだったというのが少し疑問として残る。最後は自殺のつもりで自分だとしても残り2人誰を殺すつもりだったのか。
垣脇さんについては、まだ殺される理由もわかりますが、長窪さんについてはなぜ殺されたのかが本当にわからない。あるとするならば、一件目の事件で最初下にいた件から長窪さんが事件に気付き、それをネタに役を降りるよう脅していたなんてことはありそうですが、それでもそれは脅されなければわからない事ですし、なぜ4人という数を最初から想定していたのかは謎のままです。
そもそも庵坂さんの倉石さんを庇うことが前提にあり、その流れで自分は死ぬつもりだったなら誰でもよかったなんて可能性もなくはないですが、果たしてどうなのでしょうか。
和葉の母が登場している?
ちょっとこちらは、事件とは別視点での話となるのですが、今回の一連の話の中で度々話題に上がる和葉の母が、もしかすると既に現場に来ているのではないかと、今更ながら思い始める。
きっかけとなったのは今回、和葉の父である遠山銀司郎が事件現場に姿を見せた流れ。警察がついていながら2人も追加で殺人を許した件をひどく咎めており、納得しかなく少し笑ってしまったのですが、何やら「おったらアカン奴が…混じっとるみたいやしのぉ!」という発言をしています。庵坂さんはかつて事件を起こした自分の事かと思ったようで、そちらで話が進んでいますが、何やらこのシーン和葉だけが銀司郎の姿を目ざとく見ている。このおったらアカン奴というのは、和葉の母の事を指しているのではないかと思わせるシーンでした。
新一・キッドがそっくりなのは血縁関係があったからとちょうど今年の映画で明かされましたが、母娘でそっくり、なんてことがあるのか?とどうしても思ってしまう。
しかし、改めて一連の話を見返してみると、1話最初の時点で何やら和葉が蘭にサプライズを用意しており、急に花粉症になった彼女が薬を飲みに離れ戻って来たあとに、何か気付かない?と問いかけていたりと、入れ替わりのサプライズを仕込んでいるらしき描写はこの時点で既にある。さらに、今回の終盤で和葉が持っているスマホと、前回和葉が持っているスマホは、何やらデザインが異なっていることもあり、度々口元を隠して入れ替わっている可能性が非常に高く思えてきました。
今回のラストで、浪速ハルカスに蘭たちと向かう和葉は、タイミングを考えると母の方。事件解決の地は、何やら都合よく空が晴れ告白日和。いよいよ母の目前で、服部の告白の時が近づいているのかもしれません。
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