2024年10月16日配信開始した週刊少年サンデー2024年47号より新連載となった壱原ちぐさによる『シテの花 能楽師・葉賀琥太郎の咲き方』1話『清経』の感想記事です。ネタバレもあるので注意してください。
シテの花 能楽師・葉賀琥太郎の咲き方
9月頭にまとめて新連載が続いていたこともあり、意外なタイミングで新連載が始まりちょっとびっくりしましたが、なかなか続きが気になる作品。
能楽という日本の伝統芸能を題材ということで、なかなか癖の強そうな漫画といったイメージをもって読み始める。主人公である『葉賀琥太郎』のまっすぐさ、と優しさは、非常に好感が持てるキャラクターとなっており、素直に応援したくなってくるのが良い感じ。
冒頭祖母との交流で、見せる踊りに対する興味と流れていた能の映像から、幼いころからそちらを目指すお話なのか思いきや、冒頭では既にダンスグループとして大成しているという意外な流れ。グループのメンバーとの交流では、芸能界の競い合うというつらい面を見せ、その雰囲気に合わないがゆえに道を変えるといった感じになるのかと思いったら、その実力は努力に裏付けられたものと周りからも認められており、特にそういうわけでもない。
結局、彼がダンスグループをやめた理由は、グループメンバーに降りかかった事故を、その身をもって庇い顔を火傷してしまうという、どうしようもない事故。しかし、事故で道を断たれたことを悔やむのかと思いきや、むしろ悔やんでいるのは自分の判断の遅さの部分で、落ち込んでいるというわけではないというの、彼自身の優しさを感じさせる要素で面白い。
身を庇ってもらった子も、その事故すら踏み台にして上がろうとするものの、そこには悪意などはなく、むしろ、琥太郎の事を背負って前に進むという覚悟を見せる流れに話をまとめているのがきれいでした。
作品の肝となりそうな能の描写もこの作品のキャラクター達の画風からは異質に感じるほど密度高く書き込まれており、琥太郎が新たな道として興味を持つきっかけとしての説得力を感じさせてきました。
登場人物皆、まっすぐ前を向いてひたすらに頑張っているあたり、どのキャラにも好感を持てる作品。今回は、新たな道を選ぶ琥太郎と能との出会いを描き、祖母から繋がった能への興味が彼を突き動かし大胆な行動へと動かさせました。
努力家で、前向きで、自分のこれまでの成功にも決して驕らないと、あまりにも非の打ちどころがなさすぎるようにも思える主人公ではありますが、果たしてここから彼にどのような苦難が訪れ、心を動かしていくのか気になる作品でした。
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