2024年12月25日配信開始、週刊少年サンデー2025年4・5合併号で連載された龍と苺221話『ネクストステージ』の感想記事です。ネタバレもあるので注意してください。
ネクストステージ
明かされる苺ちゃんの目的
年内最後の掲載となった今回のお話、そこで明かされたのは100年後の苺ちゃんの目的と、前回表示された謎のネクストステージの意味。
100年後の未来では本当の竜王戦はスポンサー企業達の開発するAIにより競い合いになっている。以前から暫定竜王と度々表現されていたのは、AI達による竜王戦の前に、人間たちで行われるエキシビションマッチの優勝者がが特別に参加できるが故の物。本当の強さだけを比べるAI同士の戦いに、人は勝てるわけがないという前提の元、それでも人が参加しなければ竜王に興味を持たれないから行われるおまけのような扱。
100年前の竜王戦に挑む人々、そして現代の将棋に向き合う人々を描いてきたから子の漫画だからこそ、このAI達の前座扱いされる暫定竜王という位にどこか不快感を覚えさせ、苺ちゃんならその閉塞感を壊してくれるという期待を持たせる話の広がりでなかなかに盛り上がる展開でした。
苺ちゃんが死んだことにしてそれでも将棋の研鑽を続けていた事、今回の竜王戦の中でも自分の手の内は見せたくないと言っていたあたりも、対AIを想定していたかが故のようです。
以前の話からAIが竜王戦終了後の新たな相手となりそうな予感はありましたが、思っていた以上に、AIありきの竜王戦になっている100年後の現実がなかなか衝撃的。特に正規竜王が『Bird社製 β103.51』となっており、まだβ版扱いというのもなかなかの皮肉っぷり。
もはや、人では絶対に勝てないと思われているAI相手に、100年前に無謀と言われても竜王へ向かって立ち向かって勝ち抜いた事を重ねる展開。その背中に、かつて竜王になった時に奪った羽織を背負って立ち向かっていくというのが非常に良い演出でした。
年明け新展開が楽しみ
このAIによる竜王戦が始まったのは、2060年。2060年は188話『タイトルホルダー』を見てみるとちょうど苺ちゃんが全タイトルを制覇した年ということで、この年から苺ちゃんとのAIとの因縁の始まりといった感じなのかもしれません。今回の話では将棋ロボットと対局しているのは、斎藤らしき姿にも見えるあたり、新制度将棋AIの最初の犠牲者となったシーンが描かれているのかも。
そんな中、少し気になったのは、AI開発企業のCEOたちは皆それぞれの将棋AIの順位だけを気にする中、ハワードは一人苺ちゃんという天才の出現を見てAI達の未来がないと考えている事。このあたりは、AIのシンギュラリティに関わる話となっていそうで、苺ちゃんとAIが対局する中で、AI側にも何か大きな変化が起こることを予感させてきます。そんな、AIの新たな次元に突入するなんて展開があったとしたら、果たしてそれでも苺ちゃんがAIに勝てるのかどうか。
年内最後のお話で、苺ちゃんの目的が真に明らかになり、対AIへの新展開に期待が膨らむお話。年明けからの続きが、本当に楽しみです。
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