2025年4月9日より放送開始、監督:春藤 佳奈 キャラクター原案:竹本 泉 シリーズ構成・脚本:村越 繁によるテレビアニメ『アポカリプスホテル』の感想記事です。ネタバレを含みますので注意してください。
1話『ホテルに物語を』
人類が去った地球と残されたホテル
冒頭から始まるのは、ホテル銀河楼の紹介PV。新進気鋭のホテルの開業への熱意が伝わる中、何やら不穏な情報が少しずつ挟み込まれていく。
サルが死亡するウイルス、シダ植物が原因、このままでは絶滅、人体への被害も発生、とちょっと冗談ではなさそうなワードから始まり、やがて人類は地上では呼吸が不可能となったようで、保護マスクを頭につけての生活、更にシェルターの建設でも収まらず、地球脱出計画へと話が広がっていく。
希望にあふれるホテル紹介映像と、絶望的な人類の状況が交互に、どことなくシュールに人類の絶望を描いていました。
そして、そんな絶望的な状況から、何年たってもホテルは続く。なぜなら、銀河楼はロボットにより運営されるホテルだから。人がいなくてもホテルは回り、人が来なくてもホテルは続く、人のためのホテルでありながら、人に使われることなく続くホテル、どことなく寂寥感を感じさせながらも、そこで働くロボットたちをコミカルに描く様子がなかなか心に来る作品となっていました。
個性豊かなロボットたち
1話はあくまで人が来ないまま続いているホテルで、どのようにロボットたちが働いているのかという様子を描いており、まだお客さんは来ないまま話は続く。しかし、それであっても、このホテルのロボットたちの個性が光り、なかなか面白かったです。
まず、本作の主人公であろうロボット『ヤチヨ』さん。支配人代理の代理というポジションということで、現在のこのホテルを任されているロボット。その見た目は登場するロボットたちの中では、唯一の人の姿をしたホテリエロボットとのことで、ホテルの管理を行う担当でしたが、人がいなくなる関係で支配人の代理の代理というポジションを任された様子。
放送前に見ていた絵の雰囲気からすると、もう少し緩い感じのキャラクターを想像していましたが、むしろ声はきりっとしており、バリバリに働く責任者といった感じ。
一行に来ないお客様や帰ってこないホテルのオーナーを待ち望みながらも、日々業務にあたる様子がなかなか素敵なキャラクター。銀河楼十則を語るシーンであったり、他のロボがドアマンロボに他の仕事をさせようとしたときに、彼の仕事ぶりへの評価等々、真面目に仕事に当たっているが故にちょっとずれている部分を感じさせるのが可愛いですね。
一件何も問題なく働けているヤチヨさんですが、シャンプーハットの紛失という日々変化のない日常の中で起きた一大事件に対する際に見せた緊急対応の様子は、非常にコミカルでしたが、同時にヤチヨさんが暴走していたようにもみえ、色々と限界が来ているのかなと思わせる。余裕がなくなっている際には、丁寧に対応していたドアマンロボさんの故障の件にも、荒々しく突っ込んでいたりと、彼女なりに相応に鬱憤がたまっていた様子だったのにちょっと笑ってしまう。
そして、ヤチヨさんに続いて出番の多かったドアマンロボさん。冷却用の液体の在庫がなくなった影響で、ドアを一度開けるだけでオーバーヒートしてしまうというなかなか大変な状況のロボット。
それでも、仕事をこなさねばとドアを開けるせいで、ヤチヨさんが冷却するために水を汲みに行くという流れが度々繰り返されて笑ってしまう。何やらなかなか個性の強い性格をしているようで、水をかけられるのが嫌でシャンプーハットをかぶってトラブルを起こしたり、2時間ドアを開けないと、2年必要になるのくだりには思わず笑ってしまいました。
その他のロボットたちも、見た目こそ半用ロボットといった感じですが、色々と個性がありそうで面白い。ハエトリロボットさんは、ヤチヨさんに後を任されたりと、何やらかなり信頼がおかれている様子ですし、清掃ロボットの甲乙の二体は、移動の際に体をぶつけあっていたり、指でほこりが残っていないか、相方の掃除っぷりを見ていたりと、何やら互いに競い合っている様子なのがよい感じ。今後、こちらのロボットたちにも焦点が当たる回が来るのか、気になるところです。
切なさと新たな出会い
銀河楼には数多くいるロボットたちですが、今回の話では、温泉採掘に当たっていた採掘ロボットの停止という別れが発生する。ヤチヨさんが採掘ロボットを収めた場所には、他にも多数のロボットが並んでおり、オーナーとの別れのシーンではヤチヨさんと同系統のロボットも多数いたことから、相当な数の職場の仲間たちとのお別れを経験して残ったのが今の面々であることがわかる。
周囲一帯が森に包まれるほどの時間がたってなお、銀河楼だけはホテルとしての外観を保っているのも、ホテルで働くロボットのおかげ。人がいなくなった世界で、予約、来客も、ホームページ閲覧数も0が続く中で、ヤチヨさんは営業目標が達成できていないと厳しい発言をする。人がいない世界で目標を語るというこのシチュエーションは、笑えるシーンでありながらも、同時に切なさも感じさせてくるお話。
ヤチヨさんもそのあたりはわかっていても、仕事として割り切っていただけなのか、シャンプーハットの件を経て、なにやらブルーな様子を見せている。そんな中、新たなお客様が到来というシーンで1話は終わりを迎える。
やってきたのは、トップハットのジェントルマン。扉を開いたドアマンロボは、ヤチヨさんの評判の通り完璧に度を開き、お客様の前では倒れないというのもそのプライドを感じさせ良いシーンでした。
しかし、やってきたのは人ではなく、謎の怪物。人の言葉も話すわけでもなく、人の姿をしているわけでもない、それでも、ヤチヨさんはお客様として認めて今回のお話は終了。
宇宙人であるお客さん襲来によるドタバタを描くだろう本作ですが、今回の話はそのお客さん抜きでも銀河楼で働くロボットたちの魅力がたっぷり描かれており、果たしてそこにお客さんが来たら何が起きるのか、次回が気になる作品となりました。
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