2026年6月25日配信開始、つるまかだいよりアフタヌーンにて連載している漫画『メダリスト』の2026年8号にて掲載された『螺旋の途中』の感想記事です。ネタバレもあるので注意してください。
螺旋の途中
司先生の選ぶ道
加護さんとの会話を通じてこれまでの司先生が何に縛られていたのか、という点を深掘りしていた前回のお話。そこから続く今回のお話は、司先生がそうやって得た答えをどのようにいのりさんに伝えるのか、という点に焦点が当たる。
結局のところ、前回の話で解決したのは司先生の内面の問題。それは、いのりさんが感じている重圧から解放する、という問題に直面するとっかかりを得たただけ。そこから、何ができるのか、そもそも、その必要があったのか、という点に今回触れていくことになり、より一層今のいのりさんの内面を深掘りするお話となっていました。
いのりさんのスケートへの情熱
そんな今回描かれたのは、いのりさんのスケートに向かう気持ち。演技に使用する彼女が研究した映画の中で理解できなかったポイントは、まさに今のいのりさんが全てを捧げてでも優勝したいと思うその気持ちがあるが故、という風に見える。
今回の司先生、つい話をさえぎってしまいそうになった瞬間、自ら言葉を呑み込んだりと、ここまでのお話で触れられてきたことがきちんと対応にも出ているのが良いですね。話を聞くことで、いのりさんの中にある夜鷹の原点にあるようなスケートに向ける気持ちの重さ、全てを犠牲にしてでも続けるという固い決意を改めて感じることができました。
今回の話でよかったのは、それをただ間違いとはしなかったこと。それを間違いであるとした方が確かに彼女の気持ちは楽になるのかもしれない、しかし、それは本当にいのりさんにとって本当に必要な事なのかと拾い上げていく。
司先生がその選択を取れたのは、かつての司先生がそうやって正しいのはこちらと、他人の言葉を前に選んでいたが故だった、というのも前回までの司先生の回想がよく生かされているお話でした。
結果的に司先生が選んだのは、あくまで司先生のスケートの未来を奪って自分がアイススケートを続けているのではないか、という重りを取り払うという道。自分が再びアイススケートをやるという宣言は、いのりさんが自ら選ぶ過酷な道事態を否定するのではなく、自分自身にできる最大限の事を選んだが故。
結局それはいのりさんが選ぼうとする重さの一部でしかないのかもしれませんが、それでもその後の彼女の表情を見れば、それが正しかったことは分かる。彼女にかかっていた重さを少しでも軽くできたのは間違いなく、前回時点では果たしてどうなるのかと思わせる二人の関係でしたが、綺麗な落としどころを見せてくれました。
いのりさんのコロコロと変わる表情
そんな今回、いのりさんの表情がコロコロと変わっていくのがなかなか面白いじ。特に母親の前での甘えた表情が、何とも年相応というよりも少し幼げな雰囲気を出しており、彼女にとってスケートだけが全てではないというのが見えてくるのが良い。逆に、スケートのことを語るシーンでは、その瞳が夜鷹のような暗いものとして描かれており、彼女のスケートにかける想いの重さを見せてくる。この二つの表情が一話の中でコロコロと変わっていくのが、何とも言えない彼女の不安定さを表しているようにも思え、何とも魅力的。
そんな今回特に印象に残った表情は、階段での「私を幸せにするコーチ」のくだりの発言のもの。ここで見せた顔は、親の前で甘える子供らしい表情、スケートにかける気持ちを語る表情、その二つともまた違う何とも言えない嬉しさがあふれているのが感じられる。
様々な表情を見せてくれたいのりさん、司先生の言葉の重しの分少しだけ心が軽くなった彼女が、果たしてどのような演技を見せてくれるのか次回が楽しみです。






コメント