2026年5月4日にNHKにて放送された岸辺露伴は動かないの『泉京香は黙らない』の感想記事になります。ネタバレも含まれますのでご注意ください。
泉京香は黙らない
泉京香と勘助
岸辺露伴は動かないに登場する露伴の編集である泉京香を主人公としたスピンオフ的なお話。なかなか良い性格をしている泉京香なのですが、何の力も持っていない彼女が、怪奇現象に巻き込まれ、それをどう解決するのか見ていてハラハラするお話でした。
冒頭描かれたのは、泉京香とその彼氏である勘助との二人の食事の景色。共に中華料理を注文する中、今後のデートの予定を決めようとするも、仕事に忙しい京香はなかなか予定が合わず困り果てる。そんな最中、取り出したICレコーダー、以前の会話を録音して聞かせてくるという、二度も同じ内容ではぐらかされた彼がこういう行動をとるのもわからなくはないものの、正直ちょっと異様な光景だったのですが、勘助やこのICレコーダー、後々思った以上に重要なアイテムとなっていました。
そういえば、セロリやエビは嫌と伝えておいたのに、前菜にはセロリが入ったものが来ており、相手もエビが好きという描写、ラストの二人の破局を予感させるものだったのかもしれません。
西恩ミカ
そんな今回のお話の中心にいたのは、西恩ミカと呼ばれる人物。リアルな会話劇が人気となり、2巻で累計100万部という大ヒット作家。元々はSNSで掲載していた彼女を泉が見つけ、スカウトしてきた人物とのこと。
ただ、その漫画は会話劇だけが異常にうまくそれ以外は凡庸と露伴に評価される。そして、泉もまた彼女に会ったことはなかった、とのことで実際に会ってみようと思い立ったのが、今回のお話のきっかけとなりました。
家に突然押し掛けると、一応中には入れてくれたものの、家には大量の喋らない使用人がいたりとなかなかの不気味さ。泉京香が非常に賑やかなキャラクターであるからこそ、周囲の人物が誰も喋らず、静けさに包まれた館とのミスマッチ感が不気味さをより一層高めていたようにも思えました。
食事を共にしたりと、西恩ミカの家で時間を過ごす泉ですが、本来の目的である仕事場には頑なに入れてもらえず、積極的に話しかけるものの、果てには家から追い出されることになってしまう。しかし、泉はそれでもあきらめないどころか、窓が開いていれば梯子をかけ勝手に家に入り込むという、すさまじい行動力で秘密に迫っていく。
西恩側もやましいことはありつつも、一応泉は自分の編集ではあるので、最初は帰ってもらおうと穏便に済まそうとしていたように見えました。ただ、泉のその虎の尾を自ら踏みに行くがごとき行動力は、何なら西恩側も少し困っていたりしそうな勢い。
その結果、ついに泉は西恩の秘密、舌で漫画を描いていることを突き止めてしまい、それを知られた西恩は、泉をただで返すわけにはいかなくなってしまったようです。
明かされたのは西恩の秘密、唾液なんかをなめることで声を真似ることができ、舌を食べればその声を永遠に奪う事ができる。どうやら舌を奪うとその人を支配下に置くこともできるようで、館の使用人や兄は、舌を奪われひたすらに使われる存在となっていたようです。
秘密を知った泉も同じように舌を食べ支配しようとした西恩、大して異常な行動力と好奇心があるだけで普通の人間である泉は逃げるしかない。果たして本当にどう解決するのかと思わせる流れでした。
決着
絶体絶命のピンチとなった泉ですが、そこにやってきたのはまさかの勘助。ICレコーダーの件でも束縛気味な態度はありましたが、今回はまさにストーカーのようにずっと彼女を付けていたとのこと。序盤に見せていた何やら不穏な視線や度々聞こえてきた声が、お前だったのか、とちょっと笑ってしまうと共に、泉のピンチ、まさかの彼が助け舟になるのかと思いきや、むしろ声だけ奪われてやられてしまうという何とも微妙な出番。しかし、視聴者視点でも突然の展開にかなり驚いたのですが、当事者である西恩も突然やってきたよくわからない男にびっくりしてしまったのではないでしょうか。
結局追い詰められた泉は、貴方は人のコピーしかかけていないと西恩の漫画を指摘する。しかし、その言葉は露伴が泉に伝えた西恩の漫画への評価そのものというのが何とも皮肉でちょっと笑ってしまう。ただ、その後の西恩がかなり態度を荒げていたのを見るに、おそらく本人にとってもその言葉は図星だったのかもしれません。
そんな二人の決着の鍵となったのはICレコーダー。そこには数千人の声が詰まっていると、西恩にそれを渡す泉。泉的には、単にそれを渡して見逃してもらおう程度のつもりだったのかもしれませんが、同時に数千人分の声を取り込んだ西恩は、おそらく短期間での過剰摂取に苦しみ始める。
自らの舌を切り離したのは、取り込もうとした声を捨てようとしたからなのかもしれません。一度は切り離した舌を、自ら食べて再び声を取り戻そうとしていたあたりは、何とも痛々しい描写でした。
泉は目覚めた勘助に連れられ逃げ切ることに成功、そして、その後の話では西恩もまた兄とともに姿を消し見つかっていないとのこと。舌を切り離した際、兄の意識が戻るような描写がちらっとあり、どうやら兄が妹を守ろうとしていた気持ちは支配の有無に関係ない兄の気持ちだった、という事なのかもしれません。
露伴と泉
そんな今回のお話のラストは、泉と露伴との会話で締めくくられる。自分では認めない漫画家が事件を起こして消えたせいか、迷惑な編集が困っているのを見れたからか、非常にテンションが高い露伴。担当編集の様子もうかがってみるかといった感じに非常に楽しげに泉に接してきていましたが、最後の最後、またしても泉がSNSで新人を採掘しようとする泉にまさに根負けといった感じ。
あれだけの事件が身に起きても、まったく懲りないどころか、前ばかり向いているポジティブさ。泉京香のその力強さがばっちり感じられるラストでした。
牛と西恩
そんな本作、ちらっと気になったのは、西恩先生と牛との関係。西恩先生の鼻輪なんかは、牛を意識したもののように思えました。途中屋敷には牛が飼われていることも描かれていましたが、それは単に牛タンを食べていた西恩先生のカモフラージュのためだけだったのか。
色々と考えてみましたが、牛は食べたものを口に戻して再び噛む反芻を行う動物という点に注目してみると、お腹に入れた人の舌を反芻するかのように自分の声にする西恩の力から牛が彼女のモチーフに会ったなんてこともあるのかも。何かを舐めまわす様子も、改めて思うと少し牛っぽい気もしますね。
作中で明示的に牛の要素をちりばめられていたというわけではなさそうで、あくまで西恩のモチーフに牛があった、ということなのかもしれません。




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