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原作と映画の違いとそれぞれの良さ 映画ちいかわ 人魚の島のひみつ 感想

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2026年7月24日にナガノによる漫画『ちいかわ』にてセイレーン編の愛称で知られるエピソードをアニメーション化した作品、映画『ちいかわ 人魚の島のひみつ』の感想記事です。

この記事には本作のネタバレも含みますので注意してください。

映画ちいかわ 人魚の島のひみつ

ちいかわやハチワレ達ちいさなキャラクター達の可愛さと、どこか世知辛い空気が混ざり合った独特な雰囲気が癖になる原作『ちいかわ』ですが、映画でもその雰囲気はばっちりと醸し出されている。

簡単な討伐、100倍の報酬というかなり怪しい雰囲気のある依頼を元に島に向かったちいかわ達は、セイレーンと島民たちとの問題へと巻き込まれていく事になりました。

映画化された故により深く伝わるちいかわ達の感情

映画を見た後、折角なので原作8巻のセイレーン編を読み直してみたのですが、映像化されるうえで一コマ一コマが丁寧に動きが付けられているのが感じられました。漫画を読み直していると、あのシーンこのコマか、というのがばっちりわかる。そして、その一コマの中でのキャラクターの動きが補完されたり、強調されたりすることで、映像作品だからこそのリッチな表現に生まれ変わっており、それがまたしっくりとはまっているというのが、何とも映画の完成度の高さを感じさせます。

映像化の恩恵という面で見ると、まず本作の敵であるセイレーンがそれを大きく受けているのを感じました。声がついき実際に歌声を聞いてみると、その声の美しさがよくわかる。そして、映像化に合わせてコマのサイズから解放されたその体格差もはっきりわかり、声と合わせた力強さ、目の前に立ちはだかる圧力のようなものがしっかりと感じられる。

歌やダンスという意味では、うさぎのダンスパートなんかは、かなり誇張された派手で長いものになっていたのも面白い。本作でも癖が強めな彼の独特な感じが、あのダンスパートからも大きく感じられてよかったですね。

また、島民からセイレーン討伐依頼が正式に発表されたシーンでは、セイレーンの横に自分たちの姿が描かれた、その巨体に混乱するちいさな生き物たちの姿がありました。原作では軽く一コマで描かれていましたが、映画のように混乱する人々の動き・声がついてぱたぱたと動きまわっているのを見ると、その慌てっぷり、混乱っぷりがより実感できました。

また、この混乱っぷりに関する描写では、島二郎が島民に認知されていなかったことがわかるシーンなんかも動きがつくと、島二郎を見た際の周りの恐れっぷりが良く伝わってきて、島二郎の異質な感じがくっきりと描かれて思わず笑ってしまいました。島二郎といえば、彼とセイレーンが戦うシーンも、動きがついたことで、その強者感がマシマシになって見えてくる。原作でも非常に頼りになった彼ですが、映画ではより一層そのたよれっぷりが強調されていました。

そして、今回の映画で一番印象に残ったのは、セイレーンとの戦いが終わった後、ちいかわが人魚を食べた二人を見つめ、小さくバッグを『ギュッ』と握ったシーン。

原作では、小さく描かれており、これはこれで味があるものでしたが、映像ではそのギュッが大きくピックアップされている。原作一コマに込められたちいかわの気持ちを濃縮して映像化したようなシーンとなっており、人魚と二人の間のやりようのない気持ちが非常によく描き出されていました。

原作は原作で、軽いペースでサクサクと話が進んでいく中にある、何ともいえない重いお話、独特な表現のシュールさが癖になる魅力がありますが、映画での映像化にあわせて、その細部に込められたキャラクターの動きがピックアップされることで、それとはまた違う味わい、魅力が出ている作品となっていてよかったです。

セイレーンと葉っぱの島民 何が正しかったのか?

そんな本作ですが、全体的には子供向けのかわいらしいひと夏の冒険活劇的な雰囲気が強めな作品。しかし、終盤の人魚と葉っぱの島民二人の真実が見えてくるあたりは、本作特有の世知辛い感じがにじみ出てくる。

セイレーンと島の人々、島民はセイレーンを恐れつつも、その恩恵を受け取り、ある程度のバランスはとれていた。しかし、セイレーンを恐れずに近づいてしまった双葉の島民たちとセイレーン側の無意識に起こしてしまった事件が、島自体を巻き込む大騒動へと発展してしまったというのが今回のお話。

確かに事故を起こしたのはセイレーンですが、それはあくまで無自覚なもの。強い力を持つ存在であるが故に、気づかないうちに周りの小さい生き物を恐れさせ、時には危害も与えてしまう。セイレーンは島民に恩恵を与えてもおり、ある意味、島の神様のような存在ともいえ、むしろ距離感保って関係を築くのが正解だったのかもしれません。

しかし、双葉の島民は一見穏やかそうなセイレーンに親近感を感じ、その危険を感じられず無自覚に近づいてしまった、故に起きてしまった事故。これが本当にセイレーンだけが悪かったのか、と言われるとそうとは言い切れないように思えます。

しかし、そんな事故に巻き込まれてしまった側からすれば、それを知らずに無邪気に笑うセイレーンを許すことはできず、人魚を犠牲にしても友達を助けたいというのもわかる。彼が人魚を攫うシーン、あの鈍器で殴りつける生々しい音は、映画の中では異質なものでもあり、だからこそ彼の想いが強く伝わってくる描写になっていました。

セイレーンと葉っぱの島民、どちらが悪いとは明確に言い切れないからこその、何ともいえない絶妙なやりきれなさが醸し出されており、だからこそ、ちいかわの『ぎゅっ』には、その気持ちが良く込められているのが感じられました。

そして、そんな本作は、ED後に葉っぱの二人はセイレーンから逃げ、二人だけの島を見つけるも、それをセイレーンが追いかけているように見えるカットで終わりを迎える。

セイレーンと、葉っぱの二人、どちらも悪いとは言い切れないないのかもしれませんが、それでも二人は島の人達の犠牲が増える中でも、ひたすらに隠れるという選択を取り続けた。自分たちの幸せのために誰かを犠牲にし続けた、その選択に対する答えが、最後の二人を追いかけるセイレーンという事だったのかもしれません。

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』感想まとめ

原作の一コマ一コマを大事にしながら映像化をしたのが感じられる作りながらも、そのコマごとにどこをピックアップするのか、どう動きを付けるのか、という点に力を込めているのが感じられ、漫画の淡々と進む感じとはまた違う空気感の映画となっており、特に終盤はその辛さゆえに、見入ってしまうシーンとなっていました。

原作由来のコミカルさ、世知辛さ、その両方が映像化されたことによる強みが感じられる、面白い作品でした。

なお、映画の原作エピソード セイレーン編は 8巻に含まれています。原作と映画の違い、改めて読み返してみてはいかがでしょうか?

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又三郎

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